投稿日: May 06, 2010 12:17:48 PM
メディアと読者の乖離がひどくなっていると思う方へ
既存のメディアの3つの病のうち「世間知らず」について「メディア:未来の選択肢」でとりあげたが、あくまでITに関しての世間知らずであって、デジタルコンテンツを扱う以上はeBusinessの知識・情報力をもってやっとスタートラインにつけるという意味である。eBusinessは乱暴に言えばECと、ITによる業務改善の混ざったようなもので、業務プロセスが変わる上に、以前からコンピュータはシステム更新時期がやってきてハードソフトが入れ替わるものだったのが、今度はアウトソーシング・クラウド…と業務の実現方法も変わってしまうものとなった。つまり「知識」の先の「具現化」も未体験zoneに突入しなければならないので、おそらく今までの身内での検討では手も足もでなくなるだろう。ではどうすればよいか。ITに強い仲間が必要である。そのためには金のかからないWebやケータイ、電子書籍などのトライアルを途絶えずに行っていることが役に立つ。
次に「顧客知らず」の病も根が深い。出版社も新聞社も読者を直接知らない。全国紙の新聞配達先は販売店が知っている。新聞社が知っているのは販売店ごとの部数だけだ。朝刊はチラシを折り込むので、新聞の配達はその作業にかかる1時間近く遅れることになり、それは新聞印刷の下版時間、ひいては原稿締め切りを1時間切り上げさせている。アメリカの新聞は本紙の中にチラシ的広告が入るので、そのようなことにはならない。つまり日本の全国紙のビジネスは読者を置き去りにして組み立てているのではないかとも思える。新聞販売店は地域マーケティングに乗り出すところも出てきているが、新聞本社はできない。
出版社も、いつどこで誰が何をという販売時点の情報がない。Tutayaはカード会員の属性と購買動向とPOSを分析しているので、どこで何が誰に売れそうかの予測が立てられる。それで雑誌の売り上げを維持できていて、返本も下がっている。近年でも通販全体では毎年10%台の伸びのようで、客とダイレクトに結びついたビジネスの強さを見せ付けている。電子書籍の話題の中でAmazonの脅威がいわれることがあるが、実態はAmazonの売り上げに占める書籍や音楽の割合は半分を切って、それ以外の売り上げの方が伸びている。Amazonには「紙か、電子か」というような二者択一の考えはない。要するに客を知って客のほしいものを調達するビジネスができれば、何でも売れるのである。
誰が言ったのか「出版社が中抜きされる」という話題があるが、TVでもメーカー直販が増える時代なのだから、客に食らいついていなければそうなるかもしれない。何百何千万人の客を管理することくらい今のコンピュータ環境ではたやすいことだ。その努力をする気がないなら、コンテンツのライセンスで食べていくしかないだろう。