投稿日: May 10, 2012 1:9:14 AM
経営判断が遅れがちだと思う方へ
日本人が決してデジタルメディアに疎いわけではなく、話題にしたり勉強会も多く行なわれている。日本語されたそれなりの情報源はWebにもあるし、新しい開発キットやツールのトライアルができるダウンロードもそれなりに行なわれている。そういった新しい方向に顔を向けている人はアジアの中でも多いほうだと思える。しかしそれらを駆使したメディアビジネスの成果というと、日本には少ない。中国のようにまだ通信インフラが不十分なところでも、日本より斬新なサービスが大規模に行なわれるようになった面もある。家電の凋落だけではない何かがデジタルメディアにも共通して感じられる。
電子書籍に関する開発や新サービスに取り組んでいる人はいっぱいいるのに、出版デジタル機構のような紙コンテンツの再現という何の進歩もしていない世界にしか大きな取り組みがないのはどうしたことか? いろんな人の創意工夫というものが社会的に積み上げられていかないわけで、巷の手弁当の勉強会と出版デジタル機構に金がつくことのギャップは大きいし、民力を育てあげられない行政の石頭に代わる何かトリガが必要な気がする。
Webでも電子書籍でも勉強会に集まるのはたいていそれらに関連した担当者で、いくら情報を仕入れてもそれぞれの人が動ける範囲には限界がある。価格設定やアライアンスやレベニュシェアなどビジネスモデルに関することには口が挟めないとか、出版以外の分野とのまたがり、また業務範囲、サービス範囲なども過去に経験のないことに手を出すところは担当者レベルでは決められない。記事『アイディア倒れになりがちなデジタルビジネス』ではまだビジネスの組み立て自体に創意工夫が必要な段階であることを書いたように、今はデジタルメディアは儲かるからやるというよりは、これからの針路をさぐるためにやらざるを得ない面が強いので、どうしても経営側の意思決定と2人3脚で進むべきなのである。
だから経営者が直接顔を出して意見交換する機会も必要だし、日常的には経営企画とか編集サイドでもそういった指向のある方がビジネスを創るという視点で行なうデジタルメディアの勉強会が必要になる。記事『コンテンツ価格支配の功罪』で3-4月に行なったeBookの価格問題の研究会の報告を書いたが、この1年くらいをかけて経営視点も踏まえてデジタル編集・制作に関した研究会をE-Book2.0 Forumと一緒に開催できるよう準備している。だいたい3ヶ月単位で、ビジネスの視点、コンテンツの視点、知的インフラの視点、最後にビジネスモデル、という区切りで一巡できるようにしたい。