投稿日: Jul 30, 2012 12:21:42 AM
コミュニケーションの場が必要と思う方へ
ここ10年という単位でデジタルコンテンツのテーマを考えるならば、それは「有料化」であって、電子書籍というもの有料モデルの再発明以外のところは、すでに以前からある要素ばかりなのである。有料化には妙薬はなく、結局は地道に評価を高めていくしかない。そのような志向でコンテンツの継続的品質の向上をしていけるところでないとデジタルコンテンツのビジネスは成り立たない。例えばニューヨークタイムスは他の新聞社と同じようにWebにもニュースを流していたが、2011年から有料サービスを始め、まだ何十万という単位ではあるが順調に読者を増やしている。それよりも以前から有料サービスをうたった新聞社はあったが、ふたをあけても何十人しか申し込まないところもあったことを考えると、デジタル新聞の時代に新聞社は篩い分けられるであろうことがわかる。
一方で昨年の電子出版EXPOでは割と多く見られたものにデジタルの自主出版支援サービスがあった。今でもこの種のサービスは続々と出ていて、以前はBlog利用者が無料でeBookを作れて、売れたらレベニューシェアというのもあったが、今はeBookを作りたい人がイニシャルで費用を負担するというのがある。これは自主出版が売れるわけはないからレベニューシェアが成り立たないからだろう。いずれにせよ自主出版であっても、誰かが評価してくれなければウリにはつながらない。しかしまだ自主出版の書評サイトのような評価システムができていないということは、本気で自主出版をビジネスにしようと考えている人はいないということだろう。
自主出版の場合は、ある作家が次の作品をいつ出すかがわからず、継続性があやふやである。だから作家ごとにファンがつくようにはなり難くて、コミケのサークルの如く、なんらかのグループ化しないとメディアとしての着目が得られないのではないか。そういった趣味嗜好性の強いコミュニケーションの場と評価システムが必要になる。ニコ動はうまくビジネス化できた例であって、今後はいろいろなジャンルでコミュニケーションと評価がメディアの大きな役割になっていくであろう。
そしてこのようなデジタルメディアの立ち上げに広告は何の役にも立たない。そもそも広告予算などはないからである。コンテンツの話題性によるコミュニケーションが広告に相当するものであり、話題性が高ければ広告効果も出ることになる。よくマーケティングに「コンテンツマーケティング」といいう言い方がされるが、これはトートロジーで商品なりサービスがコンテンツ化できるものならば、そもそも特段のマーケティング活動をしなくても口コミでビジネスは広がるからである。現に全然広告をしていなくてもベストセラー商品になっているものは身の回りにいくらでもある。
それに比べて実績のない新しい商品やサービスが短期間に広く認知してもらうためには、マスメディア媒体に広告が必要であった。そのマスメディアの代表であるニューヨークタイムスが有料化も成し遂げたのに、広告ビジネスはズリ下がってきている。今まで新聞という紙メディアの広告が下がり続けていただけでなく、ネットになって実際にアクセスのある中でも広告価値が下がるのはなぜか? 記事ならコメントの書き込みでさまざまな情報の膨らみができるのに対して、広告はクリエータからの一方通行であって、コミュニケーション色が弱いからであろう。人はメディアを介して擬似コミュニケーションをするようになってきたのがネットの時代である。
最近は広告業でも「広告からコミュニケーションへ」とうたうところもある。今後ともプロによる広告制作は続いていくであろうが、顧客層とのコミュニケーションを成立させるには媒体掲載だけでは成り立たず、コミュニケーションの戦略・戦術パートナーの方に軸足を置いた活動になるはずだ。