投稿日: Jul 21, 2010 11:15:18 PM
立場によって電子書籍の見方は異なると思う方へ
電子書籍の話題も少しづつ変化している。最初は垂直統合ビジネスができる巨人たちの話題が大きかったが、読者側の意識も少しづつtweetされるようになってきた。その最たるものが自炊で、読みたいものを自力で電子書籍にしてしまう。当然ながら満足度は高いだろうが、逆に言えば流通が大きな問題であることを浮き彫りにする。実際いろいろな人がeBookについてtweetする中で、既存の書籍流通関係の話題は極端に少ない。また国会図書館以外の図書館とか、学校の図書室、教育者の立場に関してのeBook関係の話も少ない。企業が扱う文書関係のeBookも少ないが、これは既に相当アプリ化が進んでいるのかもしれない。ここでは割と多い意見を整理してみた。
A : 本好き
新しい読書のカタチとか雰囲気を考えている。自分の読書習慣や読書環境に合うかとか気になるだろう。自宅の書架や書斎の抱える問題もちらちら伺える。自分の読みたいものがあった場合には、電子書籍で読むことに積極的になるし、その結果はポジティブのようだ。当然ながら紙否定派ではなく、電子書籍で「more読書」ということか。それほどビジネス拡大は考えていない。
B : 著者
著者本人の意見は少ないが、主に代弁者を通じて感じられるのは、電子書籍流通で著者がどのように扱われるのかを気にしている。著者と出版社は必ずしも利害は一致せず、どれだけ人に着目されるか、どれだけ読者へのリーチを広げられるか、どれだけ読者の声を聞けるか、などがある。こういった著者と読者のつながりを強めることは、既存の出版業界のパンドラの箱を開けることにつながりそうだ。著者のやる気につながる根本的な課題がある。
C : techie/geek
BillGatesはこの件に関して音沙汰ないが、eLifestyleを求める人はどうもデバイスの話に行きがちである。紙の本はなくなるというペーパーレス派が多く、楽観的である。過去との違いはiPadやタブレットがPCを持たない層に浸透することや、それらのユビキタスな使い道が読書機会を増やすので、電子書籍ビジネスが大きく伸びるとみる。
D : eパブリッシャ
ここでは大手出版社と別に、コンテンツを世に送り出そうとする人たちをパブリッシャと呼ぶ。それは自主出版の手助けや青空文庫など今までの出版ビジネスとは異なるからだ。絶版堂というのも著者自炊代行みたいで面白い。先日亡くなられた市川さんを含めて、結構良識のある人が多く関わっている。趣味に近いものもあるが、新しい売り方や新しいビジネスの萌芽がある。
E : 出版業者
主に大衆本を出して大きなビジネスをしているところは、紙の本が売れればそれでいいのが本音なはずで、しばしばニュースにはなっても電子書籍を売る意思は強くは感じられない。社内ではペーパーバックとeBookのカンニバリズム議論がなくならないだろう。あまり新規性のある思い切った策は出てきそうにない。マスのビジネスとしての本はいずれにせよ国内では飽和なのではないか。
F : アーカイブ
図書館や資料室・リポジトリの世界である。過去の問題としては技術革新で読めないものが出てくることで、ネット化はある部分歓迎だろう。ただしマイナーな特殊フォーマットはネット上でも問題だ。コンテンツの電子化は管理コストを劇的に下げ、しかも利活用は高まるので、このアーカイブビジネス自体が金を産まないとしても、社会的には必須の仕事である。自炊の買取もこういったところがしてくれるといいのだが。
G : 研究者
あまり発言はない。既にネットの世界でWikiとかリポジトリが使われていて、今更電子書籍という議論はないかもしれない。電子化されていないコンテンツは多いので、アーカイブの利用者としての意見はあるだろう。足りない部分は自炊で自分の書架を圧縮して身軽になりたい。自炊は学生・助手やインターンの仕事になるのか。