投稿日: Sep 06, 2013 1:0:45 AM
どこかピントがずれている
ああ、やっぱり、こういう展開になるのね、とちょっとザンネンな様相が見え出したのがデジタル教科書である。それは新たなシステムの取り組み方の問題である。特に公的な分野では従来は大手コンピュータメーカーなどシステム屋さんに、設計から開発、運営まで面倒を見てもらうというのが当たり前であったのであろう。企業においてもシステム部門がコンピュータ化のロードマップを考える役割を担っていたのと似たところがある。
しかしシステム部門のお世話にならずに自発的にコンピュータを使い出したのがPCであり、インターネットであった。つまり参入障壁が低くなると共に、応用分野が裾野まで広く拡散していくということがいろいろな分野で起こった。その延長上に今日いわれている、Cloud…とかCrowd…というものがある。
だからオープンソースも、データの標準化も、マッシュアップも、SCMも、アジャイル開発も、BPOも相互に関連しながら好循環するように発展してきたのである。
佐賀県では2014年度から県立高校全校に全員タブレットを導入する。それはWindows8で、入学する1年生全員が一律5万円の自己負担で購入しなければならないという。どうして今時デバイスやOSなどを先に決めてしまわなければならないのか不思議である。タイでも生徒全員に配ることをしていたが、それは国費であって1万円もしないAndroidタブレットであった。こんなデバイスの寿命は何年もないのだから、どのように取り替えても教育現場の経験が積み重なっていくように考えなければいけないが、Windows8固定で始めて将来どうするつもりだろう。
また教科書会社12社が共通プラットフォーム開発に取り組むコンソーシアム CoNETS(コネッツ)を発足した。しかしシステム開発は日立ソリューションズが手がける。公的分野ではシステム屋が復権しているようにみえる。まあこういった文科省の指導要領の元にある教育は仕方ないかな、と思う。何が仕方ないかというと、デジタルになっても別段変わったことは起こらないということである。その中で民間業者が仕事の取り合いをしているだけで、教育の進歩というのはテーマにならないだろう。
しかしもう一方では青空文庫(参考1、参考2)やWikipediaのような、オープンなコラボレーションによって商業活動を上回る効果を出すことも起こってきた。現状でも現場の先生が自分の開発した教材をネットで公開している例は多くある。こういったものが文科省指導要領と緩くリンクして、近くに塾などがない環境でも十分な学習ができるとか、また従来の授業では 落ちこぼれた子供でも再チャレンジできるような、また入院している子供が病床でも立ち遅れないように、など生徒の側に立った学習システムが、ネットとデジタルの基盤の上に出来上がってくるはずである。