投稿日: Oct 22, 2013 2:1:14 AM
マスメディアはそんなに変わらないとしても…
ネット上で話題になるものにはどこかにあった情報の引用が多いが、twitterやfacebookのように人々の日常とつながったメディアの特徴は、人が触れたナマの情報伝達ができるところにある。実際はナマで体験することよりも、引用される情報のほうが凄くて刺激的ではあろうが、引用が新たに生み出す価値はそれほど大したものではなく、今の段階で観察しているとマスメディアの延長のように思える。つまり既存のメディアビジネスとかマスメディアによる販促の拡大とか相乗効果をネットでやろうとしている場合が多いからだ。
今後ともネット情報の量的な主流はマスメディア関連のものであるだろう。それはやはりマスメディアはコンテンツ制作に金もかけていて、それに匹敵するものがロングテール的なところから出現する可能性は低い。電子書籍でいえば自主出版のなかで商業出版を凌駕するほど売れるヒット作はしょっちゅうは出ないのと同じである。
だからといってネットはマスメディアを補完するものに留まるということではない。記事『メディアの成り立ちが変わる』では、紙の情報を画面にコピペしだけのデジタルメディアではなく、今までメディアの影に隠れていたジャーナリストが前面にでることに意味があることを書いたが、ナマの現実に関わっている人の情報発信によって、マスメディアをバイパスするようなメディアとか出版が模索されていくと考えている。
とはいっても現状の宝くじ・バクチ的な自主出版でそうはなりそうもなく、紙の世界ではジリ貧であった小出版が再興できる仕組みを考えなければならない。それは100万人の人が同じ気持ちで1冊の本を読んで感銘を受けることよりも、ロングセラーのように年何千人でも感銘を受ける本が何百種類あるほうが満足度の総和は大きいと思うからだ。デジタルで出版をすることの敷居が低くなったことが、小部数出版を助けて読書の満足度の総和を上げていくようになれば、デジタルで出版は逓増することになる。
現状ではネットを書籍のプロモーションの場としてでしか取り組んでいない場合が多いが、ロングセラー化のためには上記の購入後・読後の満足度を可視化する場としてネットを使う仕組みが考えられなければならない。書評サイトのように買う前に読むものは既にあるのだが、読者が書籍の引用などをするところはまだ弱く、Amazonのアフィリエイトとカスタマレビューに偏りすぎていると思える。
またロングセラーだけが狙いではなく、他国語に翻訳されるような本を出すことも実質的には同じようなことで、これは専門書の場合はすでにある程度はできているように思う。いずれにせよ書籍のビジネスは発行者と読者が向き合う関係のビジネスに戻ってデジタルの再出発をするのが本筋のように思う。
出版デジタル機構・緊デジに違和感を覚えた点は、多点数発刊で経営の帳尻を合わせようとする延長に、闇雲に電子書籍の点数を増やそうとしているように見える点ではなかったか。