投稿日: Jul 06, 2012 1:0:43 AM
あまり盛り上がっていると思えない方へ
よく「馬車を作っているところが自動車を作ったのではない」とか「算盤の会社は電卓を作らなかった」という例えがあるが、メディア関連の仕事も今が未来への分岐点であって、将来も馬車や算盤で行くのか、まだよく判らない何か別の姿に変わって生き残るのか、という決断を迫るネタが目の前にチラチラしている時代である。それは今まで長年にわたって培ってきたものを捨てろということではなく、培ってきたものをベースにしてどのような方向で思考するのかということであるし、日本人の大多数にとっては苦手なことである。近年電気屋さんが赤字になって社長交代をしても、社長のコピーのような生え抜きの人では改革ができなくて、次第に沈没していくのを見るのは残念だ。
毎年何十万ページを処理するとか、大量の仕事をこなして生計を立てている例を考えると、日本的なエンジニアなら、執筆から編集・校正・制作・流通管理などを如何に効率化するかを考える。それによって過去にはさまざまな「何々ソリューション」というものを築いてきた。これは開発側も導入する側も大変な労力を使うし、一段落する間もなく次のソリューションに取り組まなければならないこともある。しかも近年は天井感、閉塞感が強まった。
それに対して、印刷物に関してはプリントマネジメント会社というのがあって、多くは経費削減を達成したら成果報酬を受けるという形で、従来発注してきた印刷物の棚卸しをする。そこで本当にそれが必要か?他の手段で置き換えられないか?などを提案・発注管理すると、印刷物関連のコストは半分くらいになってしまった外資系の会社がよくある。これは「ソリューション」のような手間がかからなくてスッキリ効果が出るが、数年で底を打ってそれ以上の改善はできなくなるだろう。
つまり日本人は「印刷物ありき」のまま効率化を考えてオフセットかデジタル印刷かなど議論するが、印刷物が果たしていた機能に着目してデジタル媒体に置き換えた方がコストパフォーマンスが上がってしまう。しかしプリントマネジメントと称している限りは数年しか改善はできなくなるので、メディアマネジメントという視点に変われるかどうかが分岐点である。視点を変えれば、デジタルメディアのコスト問題もあるが活用促進という点でもいろいろなチャレンジテーマが生まれる。そこに、馬車から自動車、算盤から電卓、という転身の可能性がでてくる。
従来の手段をパフォーマンスの高い新しいものに置き換えるだけではなく、新しい価値を利用者に認識してもらわないと自動車や電卓にはならない。このところは従来の「マネジメント」会社の欠けている点である。だからデジタルメディアのマネジメントとデジタルメディアの利用価値向上を組み合わせた努力をしているところが、アナログメディアに対する「自動車」や「算盤」を作り出すのではないかと思う。そういうところはなかなか見つからないのだが…
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