投稿日: May 27, 2013 2:13:50 AM
出版社に投資が必要になる
大学の情報循環という中に自主出版が位置づけられそうなことを、記事『自主出版はカオスではない』に書いたが、それには廉価あるいはインターンなどのボランティアによる編集や、学内・学校間での流通の仕組みなどが整わないと、学校や教員のもっているコンテンツを学内で有効活用できない。AmazonやKindleをこういった分野でも使うことは始まってはいるが、一般にはオープンにしたくない情報も多い。大手学習塾も独自教材を出版していても学内利用に限っているケースがある。これは原稿の知財権との関連もあり、市販はできないことがあるからだ。
教材が昔からコピーで配布されていたのは、日本ではどうであるのかは知らないがフェアユースの範囲ということで黙認されていた部分がある。だからプライベート自主出版ともいえるようなフェアユースのコンテンツ流通がこういった分野では必要になり、必然的に内部制作にならざるを得ない。大手学習塾などは系列で使いまわす目的で教材コンテンツのデジタル化を進めている。この分野はXML化が進んでいるので、その先にEPUB吐き出しは必要があれば行えるはずだ。しかし一般に大学の教員やインターンレベルの個人使用では専門的なXML処理はできないだろう。
今まで使われていた多くの編集システムがEPUBでファイル出力をするようになってきた。編集システムは紙面を作るという点では似たものであっても、編集作業の前提が異なる場合には、素材の状態もワークフローも違い、校正のフローや改訂のフローも異なる。だから商業出版用と、塾など内部利用と、個人使用とではITのネット環境が別なので、おそらくそういったワークフローと親和性が編集システムに求められることになろう。
例えば組織の内部利用では素材がデータベース化されていて、それらはすでに校了であって、編集と同時に何が何時何処で使われたかのログが必要になろう。オンデマンドで使われるようになると、改版履歴のようなものはなくなってしまう。個人使用の場合はレイアウトをいじりまわすよりは内容の改訂や改版履歴がメインになろう。
むしろ商業出版のようなものは、Amazonなど流通ルートと密着していて、Amazonの販促とも連動する方が都合が良いだろう。ただ日本の出版社の場合は印刷会社などに制作を投げていたために、制作から販売までの機動性を自分でコントロールする経験は少ない。Amazonは版元がアップロードすることを前提としているのに対応するには、制作会社は版元に入り込んで作業する時代になるのかもしれない。作業者は「外部」でも作業主体は出版社になり、その分の設備投資(オーサリングソフトやAdobeツール云々)もせざるをえないことになるだろう。