投稿日: Dec 06, 2010 12:33:48 AM
笛吹けど踊らずと感じる方へ
賞味期限や産地に関してラベルの貼替えが偽装ということでたたかれた。しかし今まで提供してきた技術やサービスに、バズワードの新しいキャッチフレーズをつけて、あたかも新しいことを始めたかのように装っても公取の調査が入るとか詐欺で訴えられることはない。ただしそのようなことが横行すると社会全体が技術革新に対して懐疑的になるので損失は大きい。日本のITおよびそれを活かしたビジネスが社会的な効用を明らかに出来ない要素のひとつが、この技術革新への懐疑ではないかと思う。別の言い方をすると、必然性についての説得力が足りない。
クラウドの定義を巡って、Salesforceがオラクルの「偽クラウドに気をつけろ」といえば、オラクルが「Salesfoeceはアプリだ」と言い返すことがあった。似たものとしてアプリケーションソフトウェアの必要な機能を必要な分だけサービスするSaaSとASPサービスの違いは何か、という話もあった。定義はともかくとして、見方によっては同じようなことでも、位置づけはちょっとずつ異なるものは増えていて、これらは概念で区別されるだけで商品も形のないものなので、議論するのも難しい。しかも2-3年するとサーバや通信環境も少しづつ変わり、再定義されるか新しい名称が登場する。ASPがSaaSと再定義されたのはブロードバンド環境の普及によるという。
要するにバズワードのようなものはあてにならないということだ。それよりもバズワードがなぜ話題になるかという要因を気にすべきだし、その変化がまた別のバズワードなり新分野を生みだすことに注目するべきだ。その要因が何であるかはネットワークの歴史を振り返ると判ってくる。つまりバズワードに翻弄されるかされないかの違いは、過去の技術革新の総括が出来ているかいないか、にも依存している。現在の混沌を解き明かす鍵として過去を見ているという態度は役に立つだろう。
忙しいビジネスマンやジャーナリズムが既に終わって用済みの技術やサービスを振り返る余裕はないかしれないが、シンクタンク的な組織や役割を担う人は常に過去・現在・未来を行き来する中で、ビジョンや政策や戦略の必然性を検証をするので、時系列な分析は重要になる。一般にアメリカのベンチャーは自分の目指すところを大変シンプルに言い表すことができるのは、ビジョンの検証をしてきたからで、その陰にはどこかで過去の分析が蓄積されているからである。残念ながら日本のITサイトでPVが高まるのはガジェット関係が中心で、この分野に係わる人の支えになる分析などはBlogに散らばっていて、知る人ぞ知る状態である。TechCrunchの記事ランキングでも日本人の関心は同様の傾向がみられる。
多くのPVを目指すITメディアサイトではなく、次世代メディアビジネスの考え方のバックボーンになるようなサイトの設計も必要であろうと思う。