投稿日: Dec 29, 2014 2:43:43 AM
ネット上のメディアが人々の日常の関心を呼んでいることは確かだが、人々のリテラシーの向上につながっているかどうかを考えると、いまだに一進一退のようにみえる。Wikipediaなどで、割と客観的で正確な情報に容易に辿りつけるようになっている反面、それ以上にトンデモ情報は拡散しているように思える。雑多な意見が出て発散してしまうような問題にはまとめサイトによって見渡しが良くなるという面はあるが、まっとうなblogや投稿でも野次馬の罵倒に掻き消されてしまうことはしばしばだ。
炎上が起こる場合に、多くの人は元の情報をちゃんと理解しておらず、主題が逸れて議論が発散してしまって、感情的な書き込みが増える。これは伝言ゲームに似ていることを記事『伝言ゲーム』で書いたことがある。
個人blogやSNSなどの情報発信に、情報の精査を要求するのは無理があるので、ネット上の炎上だとか混乱に対して有効に機能するネットメディアが本当は必要なのだろうが、そういった権威のあるメディアはまだない。アメリカの場合はHuffPostがかなり評価されるようにはなっているが、日本ではまだまだで、結局議論の最終的な落ちつきどころは新聞社や放送局など既存マスコミ系の記事であったりするのが現状である。
2014年の日本は大ニュースが10もないのではないかということを『2014年の大ニュース』で書いたが、考察すべきネタは数多くあった。STAP細胞云々でも問題が終了したのではなく、博士論文の実態から理研の体質とか医薬ベンチャーのことなど今から考えて取り組まなければならないことは多い。ネット上でも探せば良質のメディアというのはあるが、PVは非常に小さくなってしまって、炎上の影響力には太刀打ちできない。
紙のメディアでもスポーツ新聞や大衆紙と部数の少ない真面目なメディアの2極化という構造ではあったが、たとえスポーツ新聞でも無茶苦茶なことを書くわけではなく、明らかなウソは書けないので、表現を面白おかしくするレトリックを駆使していただけであるが、ネットで個人が情報発信をするものは紙媒体のような「踏みとどまるべきライン」がないので、ウソが多くなってしまうし、それに多くの人が引きずられていきつつあるように見える。
石原慎太郎はヒットラーのことを名弁士として称えているが、ネットでウソが蔓延する状況が、嘘とペテンの名弁士のための舞台とならないように願いたい。
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