投稿日: Aug 01, 2012 1:37:40 AM
過去のモデルから抜け出たい方へ
Ebook2.0 Forumと合同で研究会を行うに際して、名称がなかなか決めがたいことがあった。結局は、オープン・パブリッシング・フォーラム=電子出版再構築研究会、というように英語と日本語の併記にしている。その理由は、コンセプトからすると本心ではパブリッシングにしたいが、対象としては従来の出版に携わる人が転換してもらいたという、若干のねじれがあるからだ。コンセプトがパブリッシングであるというのは、情報をPublicにするということにコンセプトが集約されるからだ。しかしそれは今では本に限らずいろいろな表現手段・伝達手段があり、出版の独壇場ではなくなった。ただ情報の発生から伝達までを循環させる生態系のようなものは、テレビでさえまだ確立していないので、出版のもつエコシステムというものから受け継ぐべきところはある。
つまり現在の出版社の立場とか利益を守るかどうかという話とは別に、情報循環の生態系としての出版モデルというのは重要で、それは実態としては出版業界にあるのだから、それを活かす道も考える必要がある。7月にフランクフルト・ブックフェアのボース総裁との話で、出版関係者が自分たちの力で新しいビジネス基盤としての関係作りをするべきだという主張を記事『出版革命は、再びドイツから』で紹介したが、そこではアナログもデジタルも混在したパブリッシングの世界を想定している。
しかし日本の出版界にそのような考えは浸透しているとは思えないので、どうしても日本語の出版という言葉を使うと今の立場とか利益を守る話だと思われてしまう。その方がセミナーなどでは人が集まるのだが、そんなセミナーを十数年繰り返しても大して状況を変えることができなかったのも事実である。そこで冒頭の研究会では単なる電子出版の旬の話題を聞いて一喜一憂するのではなく、未来の出版を考える人の集まりを作りたかった。つまり、現状やっている形態や課金や販売・流通などを先に決めて、そのレールの上で1作品ずつのビジネスをこじんまり繰り返すのではなく、デジタルとネットによるコミュニケーションの変容の中で、どのようなサービスがありえるのかを問い直すことを通じて、新しいビジネスモデルを考えようという人の集まりである。
例えば今の電子書籍は一般的には何につけ従来の紙の本のメタファーで行われていて、オンライン書店のようなECをする場合が多いが、ひょっとするとそれは無意味かもしれない。つまり本屋を意識することも競争する必要もないかもしれない。つまり本屋に通う本好きの人であっても、本屋に行かなくても興味ある本が見つかって、それをその場で買って読めるという新しいエクスペリエンスが必要なのである。それが紙の本で翌日配達されようと、その場でダウンロードされようと、どっちでもいいではないか。開拓すべきは本を知る機会なのである。人の日常の仕事でも生活でも、その人の必要に応じた本なりコンテンツが見えるようにさえすれば、その人にフィットしたものは買ってもらえるだろう。
こういった頭の中で描いている新しいコンテンツビジネスが今増えつつあるのだが、それをどう表現したらいいのかいまだにわからない。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催