投稿日: Feb 20, 2011 10:28:17 PM
メディアが革命をもたらすのかと思う方へ
チュニジア・エジプトと立て続けに大衆の声による首相の退陣を実現し、それが中東での長期政権の国々にも波及しつつあるニュースが毎日のように報道されている。TVでもソーシャルメディアが政治を変えたような番組があったりするが、ソーシャルメディアを過信することも、政治が簡単に良くなることも現実的でない。逆に政治がソーシャルメディアを使うことは増えているし、今後も増えるだろう。だからといって専制的な政治が将来もまかり通るとか長期政権にソーシャルメディアが味方することもないだろう。歴史的に見ても、メディアが人々のリテラシーを徐々にではあるが向上させて、その結果新しいリーダー層やその支持層が生まれる、という以上のことは起こらないと考えるべきだ。
ソーシャルメディア革命の裏側という記事では、 エジプト革命を主導した若者主導の市民組織の一つ「4月6日運動」と、アメリカの国益に沿う形で世界各国の「民主化」を支援する諸活動との接点について採り上げている。単にアメリカの気に入らない外国政権を炎上させるだけでは、元に戻った後にはかえって原理主義のような草の根的運動の土壌を作るだけかもしれない。炎上させる方も混乱に乗じる方も政治的利用である。要するにメディアに善悪は無く、単に増幅器に過ぎないもので、メッセージのリーチを広げるだけであり、最終的には政策とかコンテンツの勝負になる。
例えば、記事『人の琴線に触れるメディアとは』では無名のオバマ氏大統領選挙で草の根運動の支持により当選したことにソーシャルメディアが貢献したものの、2010年の中間選挙ではティーパーティがソーシャルメディアを使って反撃して勝ったことを書いた。このようなキャンペーン合戦のようなものは政治運動につきものの一面ではあっても本質ではないだろう。それは広報・宣伝・販促においても同じようなことだ。人々に訴求すべき中身の良さと、それを伝えるメディアの間には相互関係があって、羊頭狗肉とか針小棒大になるとメディアの信用力も落ちてしまうことはグルーポン事件でも明らかで、メディア利用はビジネスの成長とともに変化し続けるのがよい。
かつてマスメディアか販促しか無かった時代にはビジネスの成長とともにメディアの使い分けをすることはできなかったが、今は身の丈にあったメディアを使うことができる。同時に羊頭狗肉とか針小棒大はソーシャルメディアでバレバレになる。つまりメディアも エコシステムとして取り組む時代なのである。農業でもアメリカ式に地下水を大量に汲み上げて化学肥料をぶち込んだ大規模農場は短期的には収益をもたらせても長期的には土地を疲弊させるとか生態系を壊してしまうことがある。一方グリーンファーザー杉山龍丸がインドで行ったような地勢に合わせた緑化と日本式農業は長期的に土地の人の生活を豊かにした。メディアビジネスにおいても、長期的な視点で夢を語り、ビジョンをもち、事業計画に反映させるようになれるとよい。