投稿日: Jun 23, 2014 2:11:57 AM
パトカーが振り込め詐欺に注意をしようとアナウンスしながら町を巡回している。具体的にこんな手口には気を付けようとしゃべっている。しかしこれは何の効果もないだろう。詐欺師は気をつける能力のない人を狙ってくるのだから。結論からいえば、判断力が低下して一人暮らしになっているお年寄りを守る方法はないだろうということである。だから警察は取締りをしていますというポーズを示しているだけで、おためごかしであると思う。
実際に詐欺に遭うような高齢者は、すでに詐欺が世の中に横行していることは知っていて、自分に今課せられている支払いがそういった詐欺と思われないように工作をしている。例えば金融機関で現金を下ろす際にも振り込み詐欺の注意はされるのだが、「いいえ、そういうものではない」とシラをきっていく。それは今ちゃんと現金を渡してあげないと自分の子供とか孫が不利になるので、金融機関や警察にその邪魔をしてもらいたくないと判断するからである。
つまりシチュエーションや情報で判断して、これは怪しいかどうかと考える人がひっかかるのではなく、近親者に緊急事態が起こったというスイッチが脳に入ると、そういった判断力が効かなくなるというところを突いた詐欺であるのだろう。この判断力を止めてしまうスイッチというのは世の中にいっぱいあると思う。良い大学を出て良い会社に入って昇進も訳されている人が痴漢や万引きで捕まって人生を狂わすようなことも、きっとどこかで判断力停止のスイッチが入るのであろう。大なり小なり、ボケていなくても、年齢にも関係なく、こういったディスコミュニケーションを起こす要素を人は抱えているのだと思う。
だからディスコミュニケーション状態の人に通常のコミュニケーションで何かを伝えるということは非常に困難なのである。炎上とかの現象も、社会運動も似たような面があるし、職種によってはディスコミュニケーションを維持しなければならない軍隊や警察というのもある。
悩み事相談というのも似たような状況を感じる。このディスコミュニケーションに対してメディアは無力であるし、効力を発するとしてもさらに溝や対立が深まる方向にしか行かなかった。ネットのメディアが普及してどうにかなるかとも思ったが、今のところは、良くてニュートラルになれるかもしれないというくらいだと思う。
高齢者の問題に戻ると、警察が注意を喚起すべき対象は、被害者になるかもしれない人の子や孫など近親者である。つまり一人暮らしの高齢者が自分で判断しなければならないような孤立した状況にはさせない努力をしてもらうべきである。
おそらくかなりの人は離れて一人暮らしをする親に対しては時々連絡をとりあっているのだろうと思う。そうしたコミュニケーションを通じてしか詐欺被害の回避はできないのではないか。これは工夫のし甲斐があるところで、例えば電話での話のはじめに「こないだのアレ…」というような前回の会話を引き継ぐ話題から入る会話様式が確立されていれば、他人の成りすましが割り込んできた場合に見分けがつきやすい。つまり次の会話までの時間的なインターバルがあるにしても、親子の意識の上でのコミュニケーションが不断であるようにするのである。
ディスコミュニケーションに対しては、アナログ・デジタルという問題ではなく、コミュニケーションモードを進化させることを考える必要があるだろう。