投稿日: Apr 27, 2010 12:17:17 AM
黒船 「電子書籍ビジネス」と無料経済の関係が気になる方へ
この1年ほど「無料経済」という矛盾に満ちた言葉がよく使われるが、ワイアード誌の編集長Chris Anderson氏の新著『Free』からは、製品が無料でも経済が廻る仕組みという意味と、今までのマーケティングの仕組みから自由になることの2面があると思う。極端にいうと、「無料化には必ず犠牲がつきまとうが…」で書いたが、広告宣伝を外部の会社に依頼して巨額の費用を払うくらいなら、無料版をベースに認知を広めて、それを手にした人の一部を有料版の利用者に変える方がよいという考えである。
コレが可能になるのはほぼ無料のITサービス(webやmail)があって、さらにCGMのボランティアやアフィリエイトなどの広告費に支えられて、何十万何百万人にリーチするマーケティング的仕掛けが無料になっていくという動向があるからだ。昔のソフトウェアのフリーウェア・シェアウェアと比べて、グローバル化の影響が大きいと思う。自分が使うソフトでもハンガリー製・中国製でいいものがある。ある中国の個人が作ったソフトは寄付制で寄付した人をリスト化して見せているが、数ドルの寄付が毎日10件くらいあったので、おそらく年間で200万円くらいキャッシュが入ってくるであろう。かなりニッチなソフトでも関心がある人のつてで無料で世界規模に紹介されると相当なものになる。
今日ではかつての東欧もインドもブラジルも優秀なプログラマが育っているから、日本のIT会社はそれらの人たちをうまく使うか、さもなければオカブを奪われるかのどちらかであろう。IT時代に合ったように日本が会社を作り変えて、ビジネスのやり方を変える根本的な戦略がとれるかどうかの瀬戸際に来ていると思う。書籍コンテンツであっても、電子と名がつく以上、この戦略がなくてはやっていけないはずだ。
IT関係で働く人にとってもこれからのメディアとビジネスの関係が把握できないと、自分がどこにポジショニングされるべきかを考えることができない。ニッチなベンチャー企業にも同じことが言える。既存の出版ビジネスだけが脅威に晒されているわけではない。業界の枠組みを越えた議論が必要とされていると思う。