投稿日: Aug 20, 2012 1:29:25 AM
上から目線が通用しなくなってきたと思う方へ
昔ながらの紙の大量印刷に対して、デジタルプリントでオンデマンドにするとか、デジタルデータのまま配布・配信するさまざまな方法が、この20年間のうちになんとかビッグビジネスを作り出そうとしてもがいてきた。21世紀に入ってネットの上では一定のビジネスが確立したようにもみえるが、実質的にはゲーム以外はコンテンツビジネスはおきていない。ネットで変化したビジネスはECだけともいえる。電子書籍であれ紙の書籍であれECで成功するかどうかが問題だったのだ。つまりコンテンツのデジタル化による社会の変化というのはまだない。
文書を扱う道具や方法の登場だけでコンテンツが変わるものではないのは、ワープロを使えるようになったら文章が書けるわけではないことからもわかる。だから情報の発生源がデジタル化しなければ下流がデジタル化の恩恵をフルに受けるようにはならない。企業や学校の場合は組織内の多くの情報を抱えていて、それを管理する必要があるから、情報をデジタル化して管理するソリューションというのが、塾が教材をPDF化してPODにしたようなところから、製薬会社のSGML・XMLによる大規模なものまで、 やはり過去20年間に多く登場した。
しかし我々が普段接している企業や学校で目に見えて情報流通がデジタル化したように思えるところは多くはない。ところが記事『現場視点で考える電子教科書』ではデジタル教科書教材協議会が動き出したことを書いたように、かつての戦略的なSGMLへの取り組みとは対極の、文書を利用する側からのデジタル化が起り始めている。紙文書を印刷かプリントか、またPDFやWord、これからEPUB3などの情報をどのように使い分け、振り分けていくべきか、については現場での効率を落とさないように考えなければならない。従来は人柱になることを避けていた現場も、スマホ・タブレットなどの普及のように情報環境のデジタル化が進んだために、何らかの主体的な対応をすべきだし、メリットがありそうだと思うように変化しつつある。
皮肉なことにコピー・プリンタが複合機化してページモノのスキャンもやり易くなったことで、自炊してタブレットで文書を見るというような、脱紙化が進んでいる。今は勝手な自炊代行業は営業が行い難いが、B2Bでスキャンをする業者は以前から多くあった。以上のような事を考え合わせると、技術や設備や仕組みは既に整っていて、要は企業や学校で情報伝達や共有が必要な日常で現場のサポートや教育をすることさえすれば、デジタルコンテンツの利用は動き出しそうだということだ。これは以前の業務用スキャンのようなバッチ処理ではなく、組織向けであっても小ロットで随時発生するB2Cに近い形態のサービスになってしまう点が、以前の業者が入っていけない点であろう。
おそらくサービスを提供する側には専門的なノウハウがあるにしても、以前の「ソリューション」という立場は捨てて、「サーバント」のような立場にならなければこういったビジネスはできないのだろう。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催