投稿日: Jan 11, 2012 12:35:14 AM
タブレット作ってコンテンツ入れずと思う方へ
最近ソウルに行っていて、いろいろ感じるところがあったが、現実世界はそんなに変わらないのだと改めて思った。韓国はウォン安ということもあって、テレビなどの家電が世界を席巻し、現代自動車も大変大きく伸びた。それは韓国の国内市場にも現れていて、それらは非常に多く目にした。またインターネットの環境整備はホテルにおいても日本以上になっている。社会システムでは個人IDがあるおかげで、いろいろな申し込みや申請が一発でできるという便利さがある。これは特に日本の行政が大きく遅れてしまった分野である。
しかしそれ以上でもないのだ。昔からインフラやデバイスの発達が先行して、コンテンツが後から追う状況であったように、テレビが大型平面でデジタルになったとはいえ、番組つくりはそう簡単に変わるものではない。インターネット上でも同じで新たな種類のクリエータが出てきているわけではない。ボカロのようにその兆しは随所にあるのだが、ビジネス化は全然描けていない。インクジェットの大判プロッタの登場でバスや電車のラッピングというグラフィックデザインができたように、ネットと大型サイネージやエクステリアのプロジェクションによる新たな分野ができるだろうことは想像できる。そのような実験もあるが、まだ金は回らない状況である。だからビルの壁面の大型ディスプレイも従来のビデオコンテンツを垂れ流しているだけだ。
スマホにおいてはiPhoneに対抗できるトップは韓国だが、タブレットはAppleに対抗できるところがない。それはやはりまだデバイスの開発から先には誰も進めていないからだ。しかし実はAppleそのものも成功したのはiTuneの音楽ダウンロード販売だけで、iPad以降のiBooksとか、またAppleTVのようなプロジェクトは10年前のiTuneのような状態だ。Steve Jobs はAppleの後継者に対して多くの宿題を残していった。その中心はもはやデバイス販売の比重よりもコンテンツ販売の方に経営の主眼を移すというものだったので、人材獲得もかつての技術系の人たちではなくなってくる。
今iBooksやAppleTVが苦労しているのは、既存の出版業界や放送業界との関係構築であって、コンテンツホルダは自前でデジタル時代に向かいたいのでAppleの提示する枠組みには易々とは乗らなかったからだ。この両者の平行状態はおそらく今後も変わらないで、その間を埋める新たなコンテンツクリエータが出てこないとどうにもならないと思う。テレビでいえばCATVや衛星チャンネルが登場したようなことがインターネットでも起こって、それが新たなメディアの時代を作るとすると、おそらくまだ何年もかかるはずだ。
タブレット時代を切り拓いたAppleは、ネット時代のメディアビジネスの姿を築くに優位なポジションにあるのは明らかだが、デバイスの儲けをまだまだ投入し続けることができるか、その間にGoogleや他の会社が先行できるか、などが見所であろう。また既存メディアが何か提示できるのか、今開催中のCESのレポートに興味がもたれる。