投稿日: Sep 28, 2013 1:58:27 AM
漢字の新しい課題を考える
国際符号化文字集合ISO/IEC 10646(ほぼUnicode)の作業のことを記事『文字のカタチと概念』で書いたが、これに先行するプロジェクトとして日本印刷産業連合会がJISに「補助漢字」を提案したものがあった。これはJIS83の混乱というのが起こり始めた1980年代中頃に、大日本印刷の高橋昇三さんが当時のJIS第1水準第2水準の外字や電算写植の外字などを串刺しで管理する方法を考えろということを言い出して、国立国文学研究資料館の情報処理室長をしていた田嶋一夫教授を連れてきて始めたプロジェクトだった。私の前職の組織がその作業を担当することになり、その後10年ほど外字・異体字の作業を一緒にすることになった。
外字・異体字の作業はその後も続けられているが、私は10年ほど関わって感じたこととして、作業メンバーが次第に入れ替わると昔と同じようなことを議論しだして、プロジェクトの狙うところが堂々巡りをすることだ。何のために外字・異体字に取り組んで居るのかの議論が進展しなくとも、外字・異体字の作業は延々と続いている。だから続けることには意味があるが、外字・異体字の取り組みはもっと別の視点で考える必要がある。通常に管理できないからこそ外字になるのであって、簡単に管理方法が出来ない前提での外字の取り組みが必要になる。
外字は無限に発生する。例えば漢字の部首を索引などで表わすのに、「しんにょう」など漢字の一部分を1文字のように扱う場合がある。パソコンでは2点しんにょうは文字として出るが、1点しんにょうは出ないと思う。これらはすべてが標準化された文字符号にあるわけではない。しかし漢字教育とか漢字辞典では必須になる。このような外字が作成されても年月が経てば誰が何のために作った外字かわからなくなってしまう。
学習参考書では漢字の書き順を表わすのに、しんにょうの最初の点だけが必要になることもある。場合によっては、「こう書いたらバツ」という誤字でさえ外字で作らなければならないこともある。
しかし漢字の書き順などを問題にしていたらキリがないように、外字一字一字ではなく、外字の発生理由というところに焦点をあてた研究が必要になると思う。JIS第1水準第2水準の頃はハードウェアの制限から文字種が絞られたのが、今ではUnicodeくらいは当たり前になってしまった。アウトラインフォントに書き順のデータを入れることもそれほど難しくは無いだろう。クラウド時代では漢字の書き順アプリが自動ダウンロードされて動くようにできるかもしれない。読めない字や書けない字をアシストするツールも、常用漢字教育漢字に置き換えるアプリも出てくるかもしれない。
書き順をアニメ表示するのはもう印刷の世界ではなくなるだろう。ネットの世界の漢字課題の設定する時がきていると思うし、それには外字という重箱から外に出て考えることが必要になるだろう。