投稿日: Sep 08, 2014 1:11:48 AM
日本でも1980年代はまだシングル盤レコードが売られていたと思うのだが、おそらく400円近くしただろう。アメリカではだいたい1ドルで通していて、当時でも200円とかだったので日本の半額である。その分アメリカ人は日本人よりも何倍もレコードを買っていた。日本の値段が高いのはレコードそのものではなく、他の部分にお金がかかっていたこともある。日本で発売される洋楽には、印刷されたジャケットの紙がついていて、そこに解説とか歌詞の翻訳したものが書かれていた。アメリカではそういったものは殆どなく、ほぼプラスチックの盤だけを売っていたような流通の仕方だった。
下の写真の一番上は日本人が通常考えるようなジャケットのついた45であるが、実際は紙袋であってこのほかにビニールの覆いはない。こういうのをPicture Sleeve と呼ぶが、これらは特定の有名ミュージシャンに限るし、また時期的にもプロモーション期だけであったように思う。そのため貴重品扱いされるものも中にはある。(多くは大量に出回っているものなので値段はつかない)
45盤流通の一般的なスタイルは写真中段の Company Sleeve に入ったもので、これはクラフト紙にレコード会社の意匠がついているだけで、中の音楽に関する記述は一切ない。これらが棚にずらっと入って売られている。インディーズでもアメリカ全土に配給されるものはこういう独自デザインの Company Sleeve が使われていた。
日本人からすると不親切な商品に映るかもしれない。私は大学の頃にレコードの輸入販売もしていて45盤も扱ったのだが、日本人からすると直輸入盤の倍額でもジャケットのついた日本盤を買いたい人は多かった。しかし日本で発売されていないものはどうしようもないから、渋々買う感じだった。
私が集める中心は地域的なインディーズなので、それらは写真下段のPlane Sleeve になる。要するに盤に貼られたレーベルにしか情報はない。これらはレコード店では前述の Company Sleeve と混じって売られている。売られている45盤の中で最も多いスタイルではないかと思う。
さらに処分品のレコードを買うとなると、段ボール箱に45盤が裸で詰め込まれたものがよくあった。1枚あたりに換算すると5円とか10円で、送料の方が高いくらいであった。これらも適当なSleeveに入れられて、当時は25~50セントで売られている店があった。日本ではこういう売り方はマニア向けのレコード店でしかないが、アメリカではスーパーの入り口のワゴンセールでもビニールに10枚パックされて$2.99とか、25枚で$4.99などで一般的に売られていた。
このように実用本位で、どんどん量的に流通させるのがアメリカの流儀なのかもしれない。レコードも皆がコレクションをするわけではなく、使い捨てのコンテンツであって、それは書籍におけるペーパーバックと似ているといえる。
私は1970年代に入ってからはなるべく日本版はLPでも買わないようにしてきた。それはオビとか歌詞カードとか余計なものが入っていて割高だと思った。唯一日本のライナーノーツの優れたものは日本版を買ったが、聴くだけならLPでも輸入の方が半額で済んだからだ。
電子書籍をみていても、アメリカならPDFの時代からBtoB的なものは流通していて、その土台の上にコンシューマ向け端末とか、コンシューマ向けのコンテンツが出てきたように思う。要するにアメリカはコンシューマも費用対効果という動機でふるまいを変更することがよくあるが、日本の方が計算できない「付加価値」にこだわる傾向があるので、それがマーケティングを難しくしている一因であると思う。
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