投稿日: Feb 11, 2012 1:58:11 AM
リアル世界がオンラインに負けるはずはないと思う方へ
テレビでスポーツ観戦が可能でも旅費をかけて試合を見に行く人はいるし、演劇・映画もコンサートもオンライン以外のリアルな場というのはなくならない。むしろテレビで知れわたることで店が繁盛することはよくある。雑誌もそういった生活の充実に貢献してきたし、今またネットによって更に生活をエンジョイするための選択肢は増え、それによるリアル社会の変化というのも起こり始めている。よくモノ作りをソフト・サービスと対立的に取り上げる人がいるが、同じモノを大量に押し付けることが通用しなくなって、気に入ったものを選択してもらうようになるので、モノの数は減って、選択やマッチングのサービスが増えるのである。
記事『印刷産業に明るい未来はあるのか』で触れたJFPIの「SMARTRIX2020 スマート社会に貢献する印刷産業」という報告書では今後印刷市場の縮小を予測しているが、従来のメディア制作という枠からはみだすソフト化サービス化については、ほんの軽くしか触れていない。しかし報告書でも2000年から2010年で24%伸び、2010年から2020年ではさらに33%伸びると予測しているのである。この解説がされにくいのはソフト化サービス化というのはみんなが同じようなことをするのではなく、顧客や分野ごとの個別性が強いからだ。それは顧客のビジネスの一部を肩代わりしたり、特定のパートナーとのコラボレーションによって成り立つので、印刷業共通の要素などないといえる。
報告書では紙とオンラインメディアの共存という問いかけをしているが、冒頭のようにオンラインが先に広範にあって、紙とかオフラインは、オンラインでは満たせないものを提供する位置に変わるので、ソフト化サービス化という点ではオンラインでのビジネスを先に充実させて、その付加価値サービスとして既存のサービスを見せるような逆転のアプローチが必要になる。つまり電子書籍でいうならば、先にePubで出版して、人気が出そうなものを紙でも出すというような流れである。
そうなる理由は、これも報告書には書かれていないが、スマホ・タブレットの普及に見るようなユビキタス環境の充実期に、この2010年から2020年があたるからだ。これは全世界全産業に影響を与えつつあるものなので、この潮流の上にしか新しいサービスは離陸することができないのであって、少なくともこれを無視するとか反対のベクトルをもつようなプロジェクトは最初から失敗が見えている。それは20年前にPCを否定していた人たちと同じである。
図は、最初にPC・note・mobileの装置自身の能力をイメージしていて、当然ながら机で使うPCは強力で今後ともプロの生産機として使われていく。また何らかの知的生産をする職業人はnoteを使う。しかし生産はしないで消費だけする一般人はスマホ・タブレットで十分になりつつある。そこに通信環境の変化が加わる。3G以来noteでどこでもインターネットが使えるようになった。これは今スマホ・タブレットに引き継がれているが、さらに無線のLTE・WiFiなどが発達するとPC並みの通信帯域がモバイルでも使えるようになって、PC対象のコンテンツ提供が大きく変わるのが今後の10年である。
モバイル機器の能力には限界があるものの、通信帯域が広がると強力なデータセンタによるクラウドサービスでの複雑な処理が利用できるようになるので、一般企業で使う業務用のアプリケーションもモバイル機器で行うものが増えていく。これはサービス化の分野である。従来紙の伝票をまわして行っていたような業務が、利用者認証やワークフローの自動追跡で伝票レスでしかもリアルタイムにできる。だから単なる伝票処理を越えて、今は例えば回転寿司屋が自社で開発している需要把握のシステムなども、いろいろな分野で開発されていき、結果としてリアルの世界を良くするはずである。
生活者の楽しみであっても、業務の改善であっても、オンラインの業務がゴールではなく、そのプロセスを経て、充実感とか成果がでるようになるのだろう。