投稿日: Jan 07, 2015 11:58:46 PM
Style Wootenというカントリー・ヒルビリーの音楽プロデューサーが、1970年代に黒人ゴスペルの専門レーベルdesignerを開始して、南部の黒人教会の聖歌隊をメンフィスに呼んで録音していた。私はdesignerのレコードはかなり集めていたのでStyle Wootenの名前は目にしていたのだが、カントリーのレコードが主であることは後まで知らなかった。
desingnerとは創造主である神を現わしているのだと思う。StyleWootenはあまた存在するゴスペル歌手のレコードとは違って、個々の教会内でしか歌っていない素人の聖歌隊をレコードにしていたわけで、これらが売れたかどうかは知らないが、他のゴスペルレーベルとはちょっと違った雰囲気のレーベルになっていた。今でいえばドキュメンタリーとかアーカイブに相当するような仕事だったのかも知れない。
StyleWootenの仕事は以降もずっとカントリーが中心であったようだが、R&B、Blues、Funkなどの黒人音楽も、他に殆ど録音歴のない人のものを出していた。カントリーのレーベルには時々あることである。人種による音楽区分というよりも、その土地土地のミュージシャンを記録している活動がローカルなレコードレーベルには含まれていたのだろう。アメリカにおいては音楽は一般的には全国的なヒットを狙うものではなく、地域社会の様相の一面としての、その地域の音楽というのが自覚されていたと思える。
ひょっとするとdesignerはゴスペル音楽における自費出版的なものであったのかもしれないが、まだ調べていないのではっきりしたことは言えない。でもこれらはアメリカでも例外的なレコードであることは確かである。つまり、一般に流通しているレコードを介して知る商業音楽とは別のライブの音楽の世界がアーカイブされた例である。
これはアメリカに限らず、どこでも「音楽メディア=音楽実態」ではないわけで、メディアとライブの橋渡しはなかなか難しかったのが、YouTubeなどで少し風穴が空いたようになってきた。しかしメディアを通じた音楽とは別の音楽実態を体感する機会は日本ではまだ少ないかもしれない。
音楽メディアであるレコードと、生活の場に近いナマ音楽の差はいろいろあるが、一番分かりやすいのは演奏形態であろう。つまり演奏形態を、弾き語り、小規模コンボ、楽団にわけると、以下のようになる。
実際には演じたり聞いたりする機会が多い弾き語りは、意外にレコードとしては少なく、従来の商業音楽はプロデューサの制作意図に基づいたものが多いわけで、これによって音楽産業はマーケティングをするとかヒットを狙っていたといえる。その世界を小規模なり弾語りの人たちが挑戦するのは無理があり、やはり別の道を行くことを模索するしかないだろうと思う。(この稿 続く)
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