投稿日: Dec 26, 2011 12:30:24 AM
若者へのアプローチに悩む方へ
日本の電子書籍のダークホースはニコニコ静画だ。ニコニコのプレゼンを清水メディア戦略研究所のIT Biz Social Net - BUSINESS HINT! 120回で聞いたのだが、ニコニコはアニメを含む動画+生放送+アプリ+静画の登録会員は2400万人ほどあり、パワーユーザは800万人にのぼる。この人たちは1日平均100分ニコニコを見ていて、テレビの視聴時間を上回っているという。しかしこの人たちは本屋には行かないので、今あるニコニコのコンテンツにフックして本も楽しんでもらえるようになるだろうということでニコニコ静画のコミックや電子書籍があるという。例えばアニメの原作のマンガや小説を読んでもらうという関係である。だから他の電子書籍サイトのように本屋で本を買う行動を手本とはしていないのである。
もともと出版社は勝手なコメントが付けられるニコニコには警戒感があると思われていたが、角川書店が無料でコミックを提供するだけではなく、集英社も提供しだしている。これは3.11大震災の折に週間ジャンプが配送できなくなった地域があったので、急遽電子書籍化してネットから無料ダウンロードできるようにしたのだが、その時にニコニコ経由の配信もあって、その実績を評価されたからだという。現在無料のコミック雑誌は月刊誌の月遅れにして紙の雑誌ビジネスとはバッティングしないようにしている。また印刷用の下版データからニコニコの側で電子書籍に加工しているので出版社の負担がない。しかし月遅れとはいってもトータルでみると紙の雑誌購入者よりもネット閲覧者の方が多くなり、2倍とか10倍になることもあったという。コミック雑誌をネットで閲覧する習慣はできつつあるといえる。
ニコニコのアプローチは今までの電子書籍とはいろいろな面で異なり、しかも実証的に進めているので、着実な発展をしていくだろうと考えられる。特にネット利用者の視点で組み立ている点が面白く、よくあるiBooksのような本棚イメージや本屋ぽさを否定していて、これからのビジネスをコンテンツホルダへのプラットフォーム提供を中心にして、サイトの見栄えはどのようにでもできる仕組みである。そこではおそらくコンテンツ提供のユーザインタフェースはYouTubeのような方向に進む。これができるのがニコニコの強みである。その最大のメリットはフリーなタギングで類似コンテンツのオススメを自動化するとか、YouTubeチャンネルのように情報発信側がポリシーを表現できることとか、投稿者間の友人や類似といった関係の表現とかSNS機能、facebookやtwitterなどへのフィードをすること、などなどネット上で自然に広がるような土台の上にコンテンツビジネスを考えるべきである。
ニコニコは2011になって既存メディアとのコラボレーションを積極的に展開しだして、特に3.11大震災以降はNHKとコラボしたこともあるし、小沢さんインタビューのようなニュースチャンネルの独自展開もして、2ch的なネット同好会から脱皮をした。ニコニコ静画は既存出版界とのコラボレーションの場として設定しているのであろうことは今までの経緯から判断できる。ニコニコの電子書籍が電子書籍の主流になるとは思えないし、当事者もそのような意図はないであろうが、失われた20年の間に飛躍ができなかった日本の出版界にとって何らかの突破口を提供することにはなるかもしれない。