投稿日: Dec 23, 2010 11:0:54 PM
日本発、が減っていると思う方へ
2010年のトップニュースはiPadやAndroidのタブレット・スマートフォンの登場であろうが、タッチパネルでコンピュータを操作することもタブレットPCも既知の技術であって、TEDなどをWatchしていた人ならばそのようなデモは何年も前から見た記憶があるだろう。iPadやスマートフォンは製造側から見るとウルトラモバイルPCの変形というかコモディティ化のようなもので、利用者はノートPCに比べると受動的でありクリエイティブではない。ただ操作の敷居を下げたことでPCには入りにくかった人をうまくすくい上げた製品である。デジカメでいえばコンパクトデジカメのような位置というか、今後はコンパクトデジカメも喰ってしまうかもしれない。すでにiPhoneは、カメラforDummy化している。
Appleの先人的な役割というのはマーケッティング面で発揮されていて、iPodは先にあったmp3プレーヤーに比べて一皮向けたビジネスを開拓したように、iPadもAppStoreや広告モデルで単なるノートPCの世界とは異なるものを切り開きつつある。つまりAppleは技術面のイノベーションとはいえないが、技術の波及によって起こる社会的なイノベーションを起こしている。これはSteveJobsも過去から述べているようにSONYのコンシューマプロダクトを尊敬していたことからもわかる。技術のイノベーションはディスプレイ技術やバッテリー、省電力CPUなどではこれからも期待されているが、当面は近年切り開かれた新たなライフスタイルに寄与するものとなって、よりユビキタスな利用が広がるだろう。
しかしこういった世界の競争相手も出てきていて、AmazonのKindleは市場予想で500万台売れるだろうといわれていたのが、クリスマス商戦も盛り上がって800万台以上売れるだろうとブルームバーグが報じている。iPadでもKindleのビュアがあり、iPadとKindleで読書端末競争があるのかとも考えられていたが、読書に関してはKindleの勝ちかもしれない。読書端末はタブレット・スマートフォンに置き変わられるものではなく、誰でも持っていて当たり前のコンパクトデジカメのような存在になりつつある。日本ではこういったKindleショックがまだないのでピンとこないかもしれないが、PAGE2002で電子ペーパーを大きく採り上げたことがあって、そのころから感じていたことが実現しつつあると思う。
しかし進歩は「簡単にする」だけでなく、「高度にする」という方向もあるが、前者は広がりがあって今すぐ換金できやすいのに対して、後者は電子ペーパーのごとく10年かけて深めないと市場に出せない。だが後者のイノベーションがなければ次の市場はできないので、前者の売り上げが後者に貢献するような循環が必要になる。かつての日本株式会社は自然発生的にそのようなことをしていたが、今日それがうまくいっていないのはROIが悪すぎたからだろう。今は役所もそういった循環の音頭をとることは殆どなくなっている。だから民間同士で「簡単にする」と「高度にする」の連携がとれるような場が必要で、その意味でも日本版TED(今あるものとは違う)のようなものが必要に思える。