投稿日: Jun 18, 2011 1:12:55 AM
雑誌はどうなるのかと思う方へ
人間はビジネスであれ趣味・生活であれメディアというものを通じて自己拡張をしてきた。だから人の営みをすべて包み込むようにしてメディアは発達してきた。それは歌舞音曲のように形の残らないコミュニケーションから始まって、描画・記述されたもの、そしてそれらを複製したものへと発展し、産業革命以降の工業化で大量複製とか大量伝達が可能になり、書籍新聞雑誌という紙メディアから、レコード・パッケージメディア、電波媒体、通信による媒体と、多くのビジネスを産み出してきた。
そして今、20世紀までに発達してきたメディアは困惑し始めている。新聞からケータイまで大体のメディアは国民に浸透し、しかも国民は減りつつある。そこで多くの新ビジネスでは、新興メディアが従来メディアを侵食することで伸びるモデルが考えられている。要するに椅子取りゲームとして新メディアを考えることが多い。GoogleやAppleのスマートTVの登場の時も、ケーブルカットが話題になったが、売り上げを目論む人は市場奪取という皮算業に陥りやすい。しかしそれはニーズとはかけ離れた検討とか議論になることがしばしばである。
下の図は、個人をとりまくメディアのつもりであるが、個人には家を支えるとか学校・職場という組織人としての行動と、自分の自由時間とか小遣いをどう使うかという自発的な行動とがある。それは家なら家族と共有する部分があるし、学校・職場でも共有する部分があって、情報共有のあるところにはメディアの出番もある。例えば引越ししようかと考えると、住宅情報や地域の情報について、チラシ・雑誌・パンフ・Webなどを通じて家族と共有することが必要になる。こういった組織行動に関してはどのようなコンテンツが必要であるか明瞭なので、既存のメディアがだいたい埋め尽くしていて、新メディアは利用しやすさなどを掲げて攻勢をかけている。
図の下半分は各人の意識のありようによって選択される分野であって、家族であっても趣味はそれぞれ異なり、行動範囲も違う。この分野は従来書籍雑誌とともに拡張・発展してきたといってもよい。TVの多チャンネル化でいろんな専門チャンネルができて更に充実するかと思ったが、意外にミニ放送はFMどまりで、TVコンテンツの多様化は進んでいない。むしろネットで無料化してしまったことが、他メディアの活動を苦しめている。雑誌もTVもプロの制作物であるが、それが素人っぽいサイトやBlogになぜ負けてしまうのかという分析が足りないように思う。
そのようなコンテンツを人々が求めていることは明確になってきているのに、雑誌やTVの人はそれに応えようと思っても、ネットでは金銭の回り方で既存ビジネスに匹敵するようなものが出来にくい。しかしこれは既存ビジネスの尺度で考えるからであって、今課題なのは新たなコミュニケーション技術を使ったならば、あまり金銭が回らなくても実現可能なメディアが作れることへの挑戦である。雑誌というのは過去では最もソーシャルな色合いの強いメディアであったので、それに近いネット上のコミュニティが萌芽的にはすでにある。ソーシャルメディアと新たなメディアというのが今後の焦点のひとつになるだろう。