投稿日: Oct 24, 2010 11:12:20 PM
放送界はネットに協力したがらないと思う方へ
AppleTVやGoogleTVはソーシャルメディアのようには簡単には広まっていかないが、動画が持つ大きなメディアの可能性から離れることはできない。通信と放送の融合とか、PCとTVの融合のような試みは大阪万博あたりからあったと思うが、ビジョンはあまりにも壮大で、実際にやってみるとお互いの魅力を削りあったチンケなものになりがちだった。今また同じようなことを繰り返そうとしているのか、それとも今は過去とは違う状況にあるのか? これは2つの方向から考えられている。第1は視聴習慣から、もう一つは動画コンテンツの面からで、いずれもソーシャルの動画版である。別の言い方をすると、既存の放送局や放送コンテンツの側から考えても新しいアイディアは出ていないと思われる。
第1は視聴習慣では、netflixのようなDVDレンタルがオンラインのモデルに移行しつつある点で、この会社はゲーム機でのDVD→ゲーム機でのオンライン→PCでのオンラインというように、VOD(ビデオオンデマンド)を広げ、DVD郵送なら月間1ドル高いという、ボトムアップで大衆をオンラインに誘導して成功している。つまり技術開発などせずに確立した基盤をベースにレンタルしているだけである。だからnetflixのビジネスの有り様は大衆の意識を反映しているだろうと考えられる。VODが成立するのは、情報のpull、つまりお仕着せの番組配信ではなく、視聴者の選択に基づいているわけで、その選択の背景にある視聴動機つけにはソーシャルメディアが大きく働くであろうことは想像に難くない。Facebookで友達が盛り上がっているタイトルなら見たいと思うだろう。人がTV装置の前に座る時間のうち、何パーセントがpullになるのだろうか?
第2の動画コンテンツの面は、今のTV番組でも「ネットで話題の…」というように情報源がネットになるつつある点だ。チリ鉱山救出劇でも、地下からの映像がUstreamされた。YouTubeには膨大なショート動画が蓄積されているが、まだロングテール部分がうまく活用されているとは思えない。貴重な映像でもほとんど見られていないものが多くある。動画を投稿した人がその価値をうまく表現できるとは限らないので、編集者に相当するような動画検索のオタクがどんどん登場して、断片的な動画を何らかの情報体系として見せるようなことが起こるだろう。twitterでpaper.liやflipboardのようなものが動画でも起こるだろう。例えば有名な歌手が亡くなると追悼番組が組まれて、アマチュア時代、デビュー当時から、晩年まで過去画像を辿るように、動画Wiki的な編成がありえる。しかもそれらはリンクで他の人や他の世界とつながっていく。
別に過去のものでなくても、現在のものを横断的に動画で編成することができる。今野球のドラフトシーズンであるが、新人の情報といっても過去の高校・大学・社会人とも野球の動画はすでにあるので、それらを使えばドラフトの下馬評を動画ベースで行うSNSもあるはずだ(すでに野球小僧ではやっているのかな?)。だからGoogleは既存のTVネットワークなど相手にしなくてよい。もう検索サービスはオワリという人もいるが、検索結果をどうつなげると新たなコンテンツになるか、というpaper.liやflipboardのような仕組みの開発の段階に来ていると思う。つまり断片検索ではなく、コンテキスト検索のような方向である。
これにはそれぞれの分野にかなり専門的な研究が必要で、まずは人的動画サイトまとめを積み重ねなければならないだろう。私は現在のアメリカのプロテスタントの黒人教会でどのような賛美が歌われているか、過去から何が引き継がれているかというのをコツコツ調べているが、まさにそんなロングテールが居ながらにしてできるようになったここ3年くらいは驚きである。しかしこういった新たな切り口の調査とか娯楽はどんな分野にも拓けていて、電子書籍も全く同じである。通信によってもたらされたライフスタイルの変化によって、メディアビジネスが成り立つ前提は変わるものであるので、先を想定しないでビジネスモデルを考えることは最大のリスクである。