投稿日: Jan 17, 2011 11:12:32 PM
コンテンツ流通のeBusiness化を考える方へ
記事『音楽と書籍のビジネスが似てきた』では、権利者が主人公でマネージャに報酬を払うスタイルは、音楽の方が先に進んでいて、それは本・ゲームなど他の表現にも次第に一般的な方法になっていくであろうことを書いた。音楽ビジネスの変化はCD媒体からネット配信への変化だけに目が行きがちだが、実はレコード会社などが楽曲の登録をしていたり、流通への手配をしていた裏方の仕事がネットで行える業者が登場して、費用的にも時間的にも最短で市場に出せるように効率化したことが大きい。つまり流通のeBusiness化が進みつつあることが、既存の流通をバイパスする大きな要素になっている。
またレコーディング・ミックス・マスタリングなどがパソコンでできるようになって、あまり採算を考えないでもクリエートできるようになったことが、作品を市場に出す際のリスクを激減させていて、作品の死蔵も減っていき、コンテンツを多様にする。これはあくまで嵐やAKB48のようなマスのビジネスではなく、自主制作とか特定ジャンルの活動のことである。
コンテンツが多様になっても事務処理がeBusiness化することで、マネージャの負担は増えないか、もっと削減されるかもしれない。こういった市場に作品を出しやすい環境が音楽を変えていく可能性がある。例えば大変評判になったライブがあったとすると、そのライブの様子はYouTubeにあげつつ、即マスタリングしてiTuneStoreなどに出せる。書籍ならばトーク番組やディスカッション・インタビューを手早く電子書籍に仕上げることが可能になり、書籍においてもEvent・Liveの重要性は上がるかもしれない。
音楽のネット自主流通の新たな姿を電子書籍に置き換えると、次の図のようになるのではないか?
オンライン書店は複数あって、それらに取り次ぐアグリゲータの仕事があり、そこはプロモーションやアフィリエイト(書店への誘導)などに関しても主要なところはおさえていて支援してくれる。
クリエータにもっと近いところにマネージャなり、プロデュースするところがあって、blog・SNSなどネットメディアやイベント・ライブといった日常管理が必要なところのメディアを扱う。こういったいろいろなメディア露出の機会に書店・オンライン書店への動線をつくっていくようなメディア管理を行う。
これに加えてオンライン書店自身が人をひきつけ、その中で楽しめて、作品を発見してもらえるリアル書店のような機会が加われば、何万部は売れなくても、評価されれば何千部くらいは売れる可能性はある。これはアメリカの電子書籍の自主出版から想定する部数である。
お金の流れも音楽をたとえて考えると、誰かが100円のものを買ってくれたなら、クリエータには半分の50円が入り、オンライン書店の取り分は30円というのが基本である。クリエータが直接書店に出していれば70円が入るはずだが、作品の登録から事務処理・プロモーション準備など諸々の雑務をしていられないとすると、それぞれの専門の会社や代理店を使う方がずっと効率的なので、クリエータは音楽でいうところのアグリゲータにある程度を任せるのがよい。そこで10-15円はかかることになろう。アグリゲータやマネージャは売り上げ比率ではなく、月間いくらという支払いかもしれないが、ザクッと考えると2割-3割はみなければならないだろう。
クリエータの50円の内訳には、作品のコストが含まれている。それは本人が投入した分と、アシスタント費用とか、制作費である。EPUBなど外注すればその分はここから払うことになる。クリエータが単に文章を書いているだけならば制作費・アシスタント費がかかりすぎ、出版社に任せきっている今のスタイルと大差ない。そういう人もいるだろうが、若くてこの世界を目指す卵たちは自力で上の図の多くの仕事をするであろう。それは有能な卵の人がデビューするのに出版社に任せるよりも近道になる可能性があり、それはコンテンツビジネスの活性化につながる。