投稿日: Jan 28, 2015 2:13:35 AM
かつて、印刷物を製造するには多くの長い工程を経ねばならず時間とコストがかかった。それは多くの人を雇用することであって、工程ごとに業種・業者があって、それぞれに業界団体も作られて分業をしていた。今は日本印刷産業連合会に10団体あるが、以前はその倍くらいはあったように思う。ところがデジタル化で工程間がつながっていったので、今では10団体でも多すぎるくらいである。
つまり今は分業する必然性があまりなくなってきた。しかしアウトソーシングは必要である。それぞれの会社が処理できる能力に限りがあるので、余力の融通をした方がよいからだ。これは印刷製本などのモノの生産の場合にはやりやすかった。レコードの生産も似ていて、泳げ鯛焼き君がヒットした時には、日本の全レコード会社で手分けしてプレスをしていた。印刷でも大需要が発生した時には同じようなことをしている。
しかしデータ処理の場合はこういう分業がまだ未経験である。日本の明治以来の官報をXML化した際には、元請は印刷業者ではなかったが、結局はそこから下請けとして多くの印刷会社に分散して作業することになり、大変混乱したし大幅に納期も遅れてしまい、ビジネスとしては辛いものであった。
これはデータ処理はモノの生産のようなビジネススキームでは成り立たない例である。緊デジでも1点いくらという単価を決めて仕事を流していた段階では殆ど進まずに、人を雇って仕事を待っていたところは倒産するとかひどい目にあった。しかし最後の3か月くらいで突如大量点数が発生した時点では、単価云々の話は2の次で一気に片付いてしまった。
オフィスや学校もDTPサービス会社もコンピュータ機器の設備では大きな違いはないし、ましてこれからクラウドのアプリケーションを使うとかデータをクラウドに置くとなると、編集とか制作の仕事をアウトソーシングする需要は高まっていくのだが、そういうBPO業務のビジネススキームというのはまだ見えてこない。それは官報のXML化のように、あるいは緊デジのように、最初から単価を設定できるものではなく、やってみないとコストが分からない要素があるからである。
従来、何年も継続的に仕事の関係が出来上がっている場合は、作業量に応じて事後清算で仕事はやってきたのであるが、クラウドソーシングのようにネットで誰でも参入できる場合はその方法は通じない。現在のクラウドソーシングでは発注側が値段を設定するが、それでは制作者が誰も手を上げないようになってしまう場合がある。
技術革新で作業環境が新たになったにもかかわらず、それに見合ったビジネススキームは追い付いていない。
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