投稿日: Feb 09, 2012 12:38:45 AM
リビングから雑誌が消えたと思う方へ
記事『印刷産業に明るい未来はあるのか』では、印刷業が低コストなデジタルメディアに投資しても従来の経営規模を支えることはできないことを書いた。つまり従来のメディア制作の枠からはみ出た戦略が必要で、結局のところ脱印刷が必要になる。印刷に留まるならば縮小均衡しかない。しかし脱印刷となると自分の立脚点をもう一度考え直さなければならない。でもそれが今のメディア産業の課題なのである。デジタルやネットワークの普及で何が起こるのかを考察した書籍は数多くあるが、その中でも注目したのがドン・タプスコットの『デジタル・チルドレン』で、そこに示唆されていたことはアスキー総合研究所が行ったMCS(メディア&コンテンツサーベイ 参考:新しい日本人とどう付き合う)に結果として現れた。そこでマーケティング的にはここらあたりから考え直すべきだなと思った。
JFPIの「SMARTRIX2020 スマート社会に貢献する印刷産業」という報告書は、10年後の印刷を考えることがテーマであるが、そこで問題にしている市場は既存のB2Bの印刷市場であって生活者という視点がない。経産省商務情報政策局文化情報関連産業課の方がオブザーバに名前を連ねているように、総務省系のデータは皆目入っていない。デジタルメディアを扱うには脱印刷の要素はついてまわるので、生活者の情報接触がどのように変化しているのかを、まず捉えることが重要なのではないか。国内の出版が低落傾向であることは誰でも知っているが、これを生活者の側から理解することが必要で、例えば書籍の1兆円というのは産直とほぼ並んでいるとか、今や総世帯の約半数までもが「月に一冊も雑誌や週刊誌を買っていない」状態とか、相対的な見方をすると問題のありかがわかってくる。この記事に以下のような図が載っている。
生活者が印刷メディアにこれだけしかお金を使わなくなってしまった、その枠の中で商品企画を増やしたり市場の取り合いをしていてどうなるというのだろう。JFPIのSMARTRIX2020のアンケートでは、経営上の問題として同業者競争がトップに上がっているが、それは戦略の転換がされていないからである。モバイルには個人が月に何千円は使い、ニコ動には500円払い、レンタルにも何百円払っている若者に何を提供すればよいのかを考えるのが、10年先のビジョンではないだろうか。