投稿日: Nov 25, 2010 10:32:30 PM
会社の事業も仕分けるべきだと思う方へ
政府の事業仕分けが停滞しているように見えるとか、判断に問題ありと議論されるのは、何のための事業仕分けなのか、政府が直接予算をもってすべきことは何なのか、など思想・哲学的なところのオサエが効いていないからだろう。民主党も自由党も寄り合い世帯であるので、思想・哲学的な筋を通すのが苦手で、勢い話は各論になってしまって、同じような議論をシーソーのように繰り返していく姿がある。こういったことは企業にとっても他人事ではなく、事業計画の見直しは既存事業の清算と新規事業への投資のバランスをいつも考えなければならないが、これは特別会計と似たところがある。
しかし自分の会社のしていることだから判断根拠がないはずがない。既存事業も最初は新規事業であったわけだが、スタートしても社内の人が「こりゃダメだ」と思っていることをズルズル引きずっている事業もあったりする。会計的に事業収支を見ると黒字で存続理由になるように見えても、会社の存在意義とかビジネスをするポリシー(思想・哲学的なもの)に照らし合わせて、何らかの目標を明確にしているものでなければ、会社のリソースを散漫にして最終的には競争力を弱めるものになってしまう。一般に日本は事業の見切りをつけるのが遅いといわれるように、国の特別会計と同じく仕分けが不完全であることが多かったが、その時代は終わって大英断が迫られている。
デジタルメディアの事業に関しては今は大きな節目になりつつある。21世紀の始まりの頃の日本はバブル崩壊前に戻って「失われた10年」といわれ、同時にITバブルでベンチャーも多く登場した。メインフレームからオープンシステムへという流れでさまざまな事業を興した会社があったが、いまその多くはヘグヘグになってしまって、先の目標をもう一度作り替えなければならないところにきている。最近は「失われた20年」という言い方もあるが、2000年以降の失われた10年分とは日本のITが産業に貢献できなかったという部分である。日本は日本なりにオリジナルなITでやっていけるかと思っていたものが、今Facebook、Android、Kindle、ネットTVなどの黒船として押し寄せようとしていることを、記事『2011年のメディアビジネスの台風は何か』で書いたが、これからの日本のデジタルメディアは「打って出る」ものでないとグローバルな勢力に対抗できないし、また10年後は「失われた30年」という話をすることになるだろう。
2011年は日本から世界に投げるネタはあるんだろうか? 記事『物真似仕事は才能の無駄使い』では日本からも世界に向けて仕事をしそうな会社が大企業ではないところから出てきたことを書いたように、大企業病は政府や官僚と同じく新規事業の意思決定はうまくできないが、小さい専門家集団で同じ目標を掲げられるところの方が強いので、そういう会社がもっと社会的に認知される必要がある。また事業計画は「失われた30年」にならないように、今から数年から10年先にありえそうなデジタルメディアのシナリオを意識して、毎年の事業計画に落とし込むことを常にしておかなければ、会社のリソースを散漫にしてしまう。アジアの成長企業の特徴はリーダーの即断即決という意思決定の素早さにあるが、それは製造ラインを動かす単純な事業だからやりやすいのと比べて、日本はもっと事情は複雑であるがその中での意思決定の素早さを同時に身に着けなければならない。
MEDIVERSE(http://www.mediverse.jp/)では、まず2011年の動向を予測することをキックオフイベントとして、2010年12月14日(火)に行う。メディア関連事業をしている各社の2011年計画にも反映していただきたい。