投稿日: Feb 27, 2015 1:0:57 AM
ネットでは情報がタダのようになってしまうと嘆く人がいるが、それは紙でも同じようになりつつある。本屋での立ち読みの最中にケータイのカメラで必要な部分を撮影することをデジタル万引きと表現したこともあった。書籍を自炊してファイル交換することもタダの世界の広がりである。しかし音楽の例を見ても、違法コピーや違法ファイル交換の後にはストリーミングのビジネス化があったように、テクノロジーがもたらした流通革命と、ビジネス化・経済化は別問題である。
今コンビニでは白黒コピーが10円であると思う。もうそういったものを使わなくなって久しい。家電話のFAXもまだ置いていあるのは、たまにコピーとして使うことがあるからだが、考えようでは撤去しても全然差し支えない。しかしオフィスに行けばまだどこでも電子写真方式のコピー機・複合機が使われている。数年前にこれらの将来がどうなるであろうと考えて、メーカーの開発の人たちと話し合ってびっくりしたことがあった。彼らはコピー機が減ることを全然考えていなかった。
それは台頭してきたWebなどのネットメディアがコピーの敵ではないと考えていたからである。事実ネット上のサービスの拡大でコピーが減ることはなかったようだ。しかし敵はそんなところにいるのではない。この10年くらいコピー機・複合機・デジタル印刷などなどが非常に進歩したのだが、それは言い換えるとダウンサイジングである。安くて高機能になるから、利用者は喜んで買い替えているのである。その先に何が起こるかというと、価格の液状化であって、今までコピーやプリントをするたびにチャリンチャリンと入ってきたカウンタ料金が取れなくなる日が来る。
オンデマンド印刷というものが電子写真からインクジェット化すると、そのことは現実的になるのだが、まだインクジェットはコンシューマプリントとプロダクションプリントという小規模及び大規模ユーザーの領域で、中規模オフィスには浸透していない。だがこれは時間の問題だろう。今まで商取引のエビデンスとして紙の帳票やレシートが使われていたのが、スキャン画像のようなデジタルフォーマットでも税務署で通用するようになって、証拠としての紙ファイルが必須ではなくなったからだ。
つまり一般のオフィスの中の利用で一時的に読んで捨てるだけなら電子写真である必要はなくなる。あるいは濡れては困る書類や票などでは段ボールに使われるようなドロップオンデマンドで油性インクを使えばよい。どうしても電子写真でなければならない領域は、思っているよりも狭いのではないか?
チャリンチャリンのコピービジネスの敵はネットよりも紙の世界に居るのである。
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