投稿日: Dec 29, 2010 10:30:48 PM
取締りで出版界が守れるのかと思う方へ
音楽のP2Pファイル交換の嵐のあとでiTuneのような音楽配信ビジネスが確立したことは記憶に新しいが、インターネットが登場するころも同じようなことがあった。コンピュサーブがGIFを開発すると、Playboyやアダルト誌がスキャンされまくってパソコン通信で蔓延し、アダルトWebサイトもいっぱい出来た。そのころは紙面をスキャンしたファイルの交換に関しては法律的な規制が確立していなかったのである。Google以前の検索はアダルト情報だらけであった。その後法的な整備がされてアダルトサイトはサブスクリプションとか会員制になってビジネス化し、またアダルトページは検索エンジンにもひっかからなくなった。
日本の電子書籍では「自炊の森」が話題になっているが、法的な解釈が定まるまでは、あの手この手で似たサービスが登場して、止まることはないだろう。しかしそういったグレーなサービスをしているところも長期的な展望を持って行っているわけではなく、日銭の商売として行っているので、規制が出てきても反対することはなく引き下がるはずだ。この状況は昔でいうならばソフトレンタルに似ている。パッケージソフトが高価であるのに評価はわからない時代には、借りて試す(ついでにコピーする)ニーズは高かった。そこから口コミで評価も伝わったので、ある面ではパッケージソフトの盛り上げ役にもなってたが、今の自炊は電子書籍の盛り上げ役になっているともいえる。
これを積極的に利用しようとすると、出版社側なら違法性がグレーを超えて黒になるまで蔓延させて、社会的に問題視して一挙に立法にもって行き、取り締まり壊滅させて有料化に流れをもっていこう、と考えているかもしれないといううがった見方もできる。他方読者側からすると、違法を蔓延させて作者の怒り心頭に発し、そこにJコミの先例のように、出版許諾するなら広告収入が得られるというモデルで無料化すればいいと考えているだろう。いずれも自分で動くよりは違法が許容限界を超え状況が展開するのを待っているのではないかと思えるくらいである。問題はその後にどのような企みがあるのかである。
過去にはさまざまな本が書籍流通という共通のメカニズムに一元化されていたのとは違って、民報のように無料化するとか、プロバイダのベーシックサービスに組み込まれるとか、アダルトサイトのように会員制になるとか、いろいろな道に分かれていくだろう。趣味性の高い分野は会員制のブッククラブなどになって同時にSNS化することが考えられる。紙の本なら1冊いくらということの積み重ねで経営ができるものが、別のビジネスモデルにしなければならない点が、出版界の対応を難しくしているところではないだろうか? 前述のソフトレンタル業者は実はいろんな業態に変化して生き延びていったところが結構あった。電子書籍の違法を取り締まるだけでは、出版界に仕事が戻ることにはならない。合法で伸びるビジネスモデルを作る競争が待っているからだ。