投稿日: Jan 16, 2013 1:55:10 AM
ブルースは10年単位で大きく変わっていた
ブルース&ソウル・レコーズ最新号(109)はB.B.Kingの特集で、ほぼ全LP・CDに触れているみたいだから、買い物ガイドとしては絶好の資料になるだろう。それにBBのCDも一枚ついているので、BBを知るにもよい。ただ彼のシングルのレコードのセールスとか黒人音楽への影響というのはあまり書かれていなかったように思えた。以前に戦後のカントリーブルースについては記事『文化としてみた場合のコンテンツ』に Lightnin Hopkins を採り上げて盛衰を書いたが、その続編としてはいわゆるバンド形式の urban blues はどうなったかを知るのに、BBの足跡は重要である。つまりBBは白人の若者にバンド形式のbluesを教えたこととは別に、黒人達に対しても2つの意味で影響をもたらしたのである。
それはカントリーブルースをモダーンブルースにリメークしたことで下図の青線で示していて、もうひとつは緑線のブルースを超えたBBのスタイルを作ったことである。横軸の時間推移は下のLightnin Hopkins に合わせてある。前者モダンブルース化についてはブルースの伝統的な要素をR&Bのバンドに乗せることを意味していて、カントリーブルースの素朴さに変わってR&Bの大きく豊かなグルーブ感に合うブルース形式を確立したことで、1951年以来R&Bチャートに毎年top10ヒットを3本ほど出すようになった。これ(下図の1)に刺激されて1950年代中ごろから1960年代初頭まで多くの黒人がR&Bバンド形式のブルースを録音している。ただしカントリーブルースのの時代と変わって、レコードの他の面はブルースではなくR&Bの曲が録音された。
1960年代に入るとurban blues も停滞期に入り、BBは所属レコード会社をそれまでよりも大きいabcに移籍して、過去のブルースのリメイクではなく新しい音作りにする挑戦する。しかしその成果はすぐには現われず、むしろ前のレコード会社に残したリメイクブルースの方が売れたのである。それが下図の2で、R&Bチャートのtop10には入らなくなったもののJukeBoxなどで堅実に売れていた。abcも新しい音作りだけでなく、リメイクブルースを録音するようになり、両方からBBのレコードが販売合戦をする時代であった。
BBの青線の2の部分は、ブルースリバイバルのようなもので、それまでブルースを知らなかった層にも売れるようになったから伸びたので、BBのシングルはR&Bチャートだけでなく総合チャートの100位入りを続けるようになった。それは1970年代中ごろまでの話で、ブルースの録音はどんどん衰退して行った。しかしabc移籍後の1970年にはグラミー賞をとるようになったほど、過去のブルースの形式にはとらわれないBB独自の世界を築くようになった。それが図の緑線であって、この脱伝統ブルースの流れはBBだけでなく、それまでリメイクブルースを録音していた他の黒人もオリジナルブルースを作る傾向が広まっていった。
1950年代に若者として音楽活動を始めた黒人は誰でもブルースの素養があるので、ソウルを普段歌っている人でも、ブルース的な録音を時々する人がいて、ソウルブルースとでもいうような曖昧なジャンルも産まれたといえる。
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