投稿日: Jan 20, 2011 10:14:4 PM
タブレットPCは達磨のようだと感じる方へ
AppleのNewtonからニンテンドーDSやソニーPSPを経てiPhone、iPadやAndroidまで、ARMのCPUが活躍してきたことを記事『ガジェットのジレンマ』では書いたが、昨年AppleはiPadを1500万台近く売ったようで、ある意味ではARM時代の到来である。実際にiPhoneなどを作っているFoxconnがニンテンドーDSやソニーPSPなども組み立てていたので、デバイスとしてのタブレットやiPhoneは枯れつつある技術であって、Appleに関してはデザイン面で勝利したといえる。スマートフォンに関しては通信インフラがあってのものなので、次はLTE・4Gに向けて環境はどんどん進んでいくが、タブレットに関しては同様に進歩しているといえるのか?
iOSがマルチタスクに対応するとはいっても、デスクトップと操作性を比較するのは無理があるだろう。PCでWebを見ているときには、メモにカット&ペーストしながらblogなど書きモノをする人も多いと思うが、そういった「生産ツール」としてタブレットが使えるようになるには、まだインタフェースが一皮も二皮もむけないといけない。今iPhoneなどは店頭で店員さんが顧客対応する際の端末になっている場合があり、そのような既存のメニューに従ってルーチンの仕事をするにはタブレットもよいだろう。今まで専用端末でやっていたものが、Webブラウザ機能も使えるようになることで、持ち歩けるPOPとか電子カタログともなり、顧客対応はリッチにできる。
2010年にiPadが発売される前からAndroidのタブレットは発売されていて、買ってはみたものの、実際にはWebブラウザとWebメールくらいしか使い道はなかった。メールも読むだけならいいが、何かを調べてちょっと長い文を書くとなると、パソコンを立ち上げる時間を待ってもその方がよかった。どちらかというと録音できるカセットテープデッキと再生専用のウォークマンの差のようなもので、オーディオ機器をいっぱい使う場合にはデッキの方がよいような関係だ。実際にタブレットの中を除くと、これまでパソコンが積み上げてきたいろいろなインタフェースなどをそぎ落としたものであることが分かる。
タブレットに先行してたくさん売れたウルトラモバイルPCはPentiumからいろいろなところをそぎ落として省電力化したAtomがCPUとして使われている。これはIntelとWindowsの世界がレガシーのインタフェースを追放してきたことの線上にある。iPadはさらに思い切った省略をしていて、MacBookAirもそれに近いものである。しかしこういった画面表示主体のマシンとクラウドアプリだけで世の中の仕事ができる時代はすぐに来ない。つまり今はその間を埋めるべき「ワークステーション」に相当する部分の技術革新は弱まっている時代かもしれない。プロのオーサリング用には特殊なコンピュータが組み立てられているが、それらで発達した技術を受け継ぐべきハードウェアプラットフォームが減っている気がする。