投稿日: Nov 02, 2012 12:22:27 AM
電子ペーパーを買うのを躊躇している方へ
タブレットの新製品がたくさん発売されるのとは対照的に、電子ペーパーはKindleやKobo、SonyReaderなど限られた市場以外には広がっていかなかったが、研究開発段階では中止や撤退というのが相次いでいて、勝負あった感が漂っている。電子ペーパーに将来がないというわけではないだろうが、今のタブレット型端末に使うにはアドバンテージがなくなってきたというか、液晶が予想以上に進み、しかも安くなってしまったということがあるので、電子ペーパーは戦略を変えなければならなくなったのである。
電子ペーパーは構造が簡単で電気を消費しないでも表示を維持できるというのが最大の特徴であるが、表示の駆動をする回路は基本的に液晶と同じようなものを必要とするので、コスト面ではあまり差はなく電子ペーパーが有利にはならない。液晶の方はケータイ時代からLEDバックライトになったので、そこで大きく省電力化してスマホやタブレットが生まれた。電子ペーパーの読書端末はそれらがまだなかった時代の設計であったのである。今は電子ペーパーにもフロントライトをつける動きがあるが、それでは省電力で電子ペーパーを使っている意味は半減してしまう。今後も液晶の省電力化は進んでいく。
液晶よりも電子ペーパーの方が文字を読みやすい点は残るのだが、液晶も100dpi、200dpi、300dpiと解像度が上がっていって、今では紙よりも再現性がよいほどのものもある。商品カタログでも高級感を出すには紙のカタログが必要だといわれた分野も、デジカメで撮ったものを高精細な液晶で見れば全然劣化がないので、紙以上のものとして使われることもある。しかし電子ペーパーが300dpiになるのはいつのことだろうか? 今の電子ペーパーの解像度からすると、文字の再現は一昔前のオフィスのレーザープリンタのようなものなので、どうしてもフォントが太目のゴツい感じになってしまう。そうしないと明朝の横線の細い部分が飛んでしまいかねないからである。
それでも長時間読み続けるには電子ペーパーの方が紙のような素材感があって向いている。それは紙が入射する光を八方に拡散してしまうので、どの角度から見ても表面反射で白さのムラが起きないという特徴を電子ペーパーが引き継いでいるからである。紙の本は人がどんな姿勢で読んでもよいということが電子ペーパーにもあてはまる。しかしそもそも長時間読書を続けるというのがどれだけ大衆性があるのかというのが、機器のマーケティングとしては問題になっている。つまりそんな読書熱心な人は多くはないだろうということで、電子書籍端末各社もゲームや動画も楽しめる液晶タブレットをマーケットに投入することになった。
ということで大衆的には液晶が勝利をするとして、むしろ本を一日中開きっぱなしにするような用途で、さらにマルチ画面化するような、何らかの進化を電子ペーパーはすることは考えられるのではないだろうか。