投稿日: Sep 30, 2014 12:20:26 AM
香港政府のトップを選ぶ行政長官選挙に関して、立候補者を指名する中国案に反対する学生デモが大規模化している。これは共産党の中国本土の体制が香港に及ぶことを阻止しようとする民主化要求のように見えて、天安門事件のようなことが起こるのではないかという記事も出ている。しかし100%そうとは言い切れないものを感じる。それは香港全体としてはこの10年で中国本土への信頼が随分高まったように見えるからである。多くの企業が中国本土と連携したビジネスをしている。つまり工場は中国本土にあって、本社機能とか世界への窓口として香港が位置付けられることが増えたからである。
これはすでに中国経済に香港が組み込まれてしまったことを意味するし、それはこの10年を振り返ればよく儲かる仕組みとして香港の人にも評価されているものである。端的に言えば香港は英語が喋れる中国人として本土に雇われているようなもので、それに乗っかった人が成功をしている。だから香港の経営者は共産党が好きであろうが嫌いであろうが、政策としては今の中国共産党路線に反対はしていない。それは香港の立場を活かした政策だからだ。だから香港の政治勢力としては中国共産党と今のままの関係でいたい人の方が多い。
一方で若者の方は経済のことは考えておらずイデオロギー的な判断をしていると考えられる。しかしその多くは過去に中国共産党がしてきたことを嫌っていることからきているのだろう。共産党の一党独裁とはなるべく距離を置きたいことは分かるが、それにどのような対案とか改革案があるのかどうかはわからない。民主主義という言葉は口当たりがよいが漠としたものだ。中国は変わらなければならないことは事実だが、それは共産党の内側からしかできないのが現状だ。それができない香港の人のいら立ちが街頭行動にでているのだと考えらえる。
つまり今商業的には成功している経営者の世代は現状維持でよいとするのに対して、保守化した彼らのふがいなさというのを若者は感じていて、香港の内部の世代間亀裂が起こっている。日本も高度経済成長の中で労働運動を母体とした「革新」は骨抜きになっていったような状況が今の香港に感じられ、それを察した敏感な若者は意識の向けるところを見つけられなくなっているのではないか。この先は単純な民主化運動の継続とか盛り上がりがあるようにも思えないのだ。
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