投稿日: Jun 07, 2011 11:46:45 PM
ベンチャーに虚しさを感じる方へ
3.11の震災以来しばらくTechCrunch などのニュースに関心が薄れて、ITの新ビジネスなどに関するBlogを書く気が起こらなくなった理由は、そんなことが社会的に重要なことではなく思えてしまったからだ。これはITとかベンチャーに限らず昔から惰性で行われてきた多くのことにも当てはまって、人が毎日の暮らしの中で意識したり思い悩んでいることの95%くらいはどっちに転んでもよいようなことだと思え、なんともいえない虚無感が漂った。だからといって役に立つことばかりをやればいいということではなく、利用者に充足感を感じてもらえるような仕事をするのでもよい。今話題のビジネスも充足感という観点で見直してみるといろんなことに気づく。
まずAppleは機能的に凄いという気はしないのだが、利用者の充足感が高いだろう。概して技術オリエンテッドなサービスは利用者の充足感は低い。こんなことが可能です→だからこんな利便性があります→だからこれくらいお金を払いなさい、というような提案が多い。しかしこれらの多くは必須ではないし、代替の方法はいくらでもある。だから高い値ずけをすると迂回方法が開発されて逃げられてしまう。これを営々と繰り返し、最終的にオープンソースのようなものになってしまう。オープンソースも商用のものの代替をやっているだけでは切ない。JAVAとかクラウドの技術のように次世代を切り開くチャレンジが美しい。
Appleはlook&feelの充実以上には、コンピュータの利用シーンを前進させない点が惜しい。iPadの登場はMacの登場の時に似ていて、評価は高いもののなかなか使いこなせなかった。WiredVisionのBlogでiPadは電子レンジのようなものという記事があったが、あれば便利なもののガスレンジのようにいろんな調理には使えない。産業用などで10年使うシステムにMacでもiPadでも使うのははばかられる。このままではAppleは気の利いたリモコンのようなヒューマン入出力インタフェース専用のデバイスになるかもしれない。HTML5とか技術標準が有用なシステムと気の利いたインタフェースを結合させるので、そこに遣り甲斐が出てくるだろう。
日本の電子書籍も各国内BookStoreサイトが1万点とか2万点といっているが、これは駅前の本屋程度であり、実際には駅前の本屋の方がずっと楽しい。ヘビーユーザがのめりこむには10~100万点が必要だろうし、素人に利用習慣を身に着けてもらいたいなら、いつも面白いものがあるワクワク感が必要であろう。しかし紙の出版社が書店店頭でのビジネスを熟知しているとは思えないし、紙の出版企画でアップアップしているところに電子書籍で面白がらせる企画を作れるかどうかも疑問である。記事『黒船来なければ何も始まらない?』で、編集者やプロデューサにとっては、出版社に屈することなく仕事ができるかもしれないのが電子書籍であることを書いたが、従来の出版プロセスでは隠れた存在であった人々がもっと社会の前面に出てくると、面白いものも増える。つまり出版サイドがコントロールする書店ではなく書籍の自由市場としてのBookStoreサイトが望まれているのだと思う。
震災ショックを機会に、大胆な一歩を踏み出してもらいたい。