投稿日: Oct 16, 2012 1:7:56 AM
ビジネスマインドのズレが生じたと思う方へ
1年ほど前に、記事『日本のメディアビジネスは本当にダメなのか?』において、過去40年くらいの書籍・雑誌や音楽の推定売り上げの変化を振り返った。そこでは日本の本や音楽などのコンテンツ産業は売れていないのではなく、下降しているだけであるとした。現状の困難さは過去に大きなピークがありすぎたので、下降の落差に対応が追いつかないわけだが、それはメディアビジネスをする企業体の内側の問題で、世の中には市場が毎年のように急速に増減する分野はいくらでもあるので、そういった変化に耐えられない組織であることが最大の問題だろう。
読書は紙であれ画面であれ減ってはいない。図書館でもBookOffでもWebでもあまり金の回りと関係ないものが増えている。音楽はレンタルCDの閉店が増えているわけではない。こういったコンテンツニーズに対応できないマーケティング不足を何とかしなければ、紙のビジネスよりも乱高下が激しいデジタルコンテンツのビジネスをするのは難しいだろう。デジタルは在庫を抱えるリスクがないと言われるが、デジタルならではのリスクを想定した組織や運営に切り替えなければデジタルコンテンツを扱うことはやめたほうがいいだろう。
この1年間に何とか日本流のコンテンツビジネスのマーケティングが見出せないものかと調べていたのだが、なかなかよい事例は見つけられなかった。記事『変わる出版マーケティング』では、2011年の書店売上げランキングtop10には、2 ブックオフコーポレーション、3 ジュンク堂書店、5 未来屋書店、6 ヴィレッジヴァンガード、9 トップカルチャー(TSUTAYA他)と、半数は老舗では無くなってしまったことを書いた。小売業はどの分野でもマーケティングで差がついたり序列の入れ替わりが起こる。そしてなぜそうなるのかをデータで追っているのが普通であるが、そこが追いきれていないのがコンテンツビジネスの特長だったかもしれない。
しかしネット上でコンテンツが販売されるようになると、この状況は小売モデルからダイレクトマーケティングに変わってくるだろう。今の日本の電子書籍が売れないのは、検索の際にもひっかからないことを記事『進化を続けるメディアサービス』で書いた。今Ebook2.0 Forumと共同開催の研究会:オープン・パブリッシング・フォーラム では10月17日の 新しい出版マーケティングの時代 に続いて11月にはマーケティング課題の整理に入るが、この間感じていることは出版は初心に戻って再考する必要があるだろうということだ。昔子供のころは駅前に本屋やレコード屋があって、その規模も点数も今の比ではなかったが、それでどのようにして生計をたてていたのだろうか。
駅前の商店街をネットにしたようなものが楽天にもあるともいえるが、楽天などに出店しているところのほとんどは1日の売り上げが何万円というが、そういった単位のビジネスを束ねるような形でコンテンツビジネスもやり直すのが、日本のフツーの業界とズレの少ないダイレクトマーケティングができるようになる道ではないかと思う。