投稿日: Sep 07, 2010 10:53:27 PM
制作はできてもビジネスの成立が描けない方へ
AppleはiPodが2億7000万、iPhoneのiOSが1億2000万と、すっかりパソコンビジネスから転換を果たし、パソコン市場に対してもiPadをぶつけ、さらにメディアビジネスへ進撃を続けている。ポケットの中のデジタルガジェットに関してはバーチャル帝国を築いたといえる。記事「iPad万岁! 偉大なジョブズ主席万岁!」ではAppleのアイディアとビジネスの成功は一致しないかもしれないと書いたが、デジタルガジェットの開発の先にコンテンツにどのような付加価値サービスをつけるかに関しては、今までと異なるチャレンジなので、成否は未知数である。AppleTVというSTBを売って有料コンテンツにすることについては、非常に大きく期待する人と、困難を予測する人に2分される。
AmazonやAppleがeBookを牽引したのは、価格決定権を持ったからであろう。デジタルコンテンツに値をつけて商品ならしめたものはAmazonやAppleの提供するユースウェアであり、その設計要素のひとつに価格もある。どこかの出版社が勝手に電子書籍を作ったところで、AmazonやAppleのトータルサービスには対抗すべきもない。これはiTuneなどで培ったもので、その先に動画提供のビジネスをAppleが考えていたことは、MacにBlueRayドライブをつけないことに固執していたことからも想像できる。しかし音楽とTVの違いというのは大きいように思う。
iTuneが登場したタイミングはP2Pファイル交換による海賊行為に音楽業界が頭を痛めていた時であり、一部ビートルズのように賛同しないアーチストもいたものの、海賊行為の横行よりはiTune のビジネスはよいわけだし、CDが減ったとしてもiTune が登り調子になってP2Pが減った実績を音楽会社は評価せざるを得なかった。しかしTVは普通はそもそも無料なので、CDのように壊す対象がない。CATVに対する海賊行為が横行しているわけでもないだろう。だから音楽のようにはTV業界はAppleの方がマシと判断しなくて、Appleが思うような主導権がとれなかったのが先般のAppleTVの内容ではないか。今回の内容ならTV録画を有料でサービスしてもらうのと何が違うのかと思うが、それが元の狙いではなかっただろう。
コンテンツを売るビジネスはiTune方式に帰結するのではなく、もっといろんな可能性が試されるであろう。アナログの時代から雑誌や新聞やCDのような個別コンテンツ課金ではない定額制があり、そういうバンドルとかサブスクリプション、会員制的なビジネスも存在する。電話が音声通話以外の要素が増えて従量制から定額制のサービスになったように、いいかえると電子書籍を制作したら何かビジネスになるのではないか、という紙の本のアナロジーのビジネスはナンセンスになり、どういうサービスを作り出すのかを考えてコンテンツを提供するのがPOSTMEDIAの時代になるのだろう。