投稿日: Apr 26, 2012 12:47:8 AM
TVの楽しみ方は変わってしまったと思う方へ
4月25日(水)にASCII総研の遠藤諭氏を招いて、セミナー兼ワークショップ 『今、TVを見ているのは誰だ』1万人調査データでフォーカスする顧客行動 を開催し、当日の資料はwww.mediverse.jpに上げてある。テーマにTVとついているのでちょっと不思議に思った人もいるかもしれないが、理由は昨年の震災や地デジ移行で最も変化したのがTVであったからだ。ASCII総研のMCSからまとめられて幾分一人歩きしている図でも2010年から2011年の変化でTVの視聴時間が17.9分減ったことが「へえ~」という反応をよんだ。今までどんな新メディアが登場しても伸び続けていたTV視聴であるので、減った理由がいろいろ推測されている。
一般の人がこの結果をみると、「TVはおもしろくないからなあ」という反応が多いが、それは昨日今日のことではない。この調査ではこの1年でゲーム機もPCも携帯電話もTV以上に減らしていて、「TVはおもしろくない」の説明は成り立たない。かといって伸びたスマホやタブレットが、TV・ゲーム機・PCの領域を大幅に喰っているという実感もない。アメリカでは電子書籍の普及が紙の書籍の2割になったとか、タブレットも含めて成人の2割がこの種のデバイスを使うようになったというように、特にKindleFireが火付け役となってデバイスの普及が目覚しかったが、日本はそれほどではない。
遠藤氏の分析では、家庭に3台あったTVが地デジ移行が2台なら1台は使えなくなるようなことや、TV視聴傾向の中ではヘビーユーザーが減っていることを理由に挙げた。後者は録画が伸びていないことも関係しているだろう。これ以外には震災が映画のような娯楽を遠ざけてしまったのと同じ傾向が女性高齢者の視聴に見られるとの話だった。TV視聴はすでに独りで見ているのが主なので、地デジ化でTV台数減が影響しているのが理解できるし、以外にワンセグの視聴も減ってはいないこともTVが独りメディアとして定着していることを表しているかもしれない。特にTV視聴時間が長いのはダントツに主婦であり、昔のお茶の間で一家で楽しむTVの風景はなくなっている。
こういった視聴傾向の変化に対して、今のTVのコンテンツがマッチングしているのかどうかという検討が必要だろう。つまり視聴率という1つの指標で番組の人気とか評価を考えるわけにはいかないのである。MCSでは5歳単位でデータを正規化して、主婦・学生・フリーター・ゲーマー・アニメマンガ好き・iPhoneユーザ・音楽ファン・エコ指向・金持ち・体育会系・おひとりさま、などのクラスターで、その人たちがよく見るTV番組を抽出していたが、クラスターの単位では視聴率が数%でも注目されている番組があることがわかる。
TV視聴は世帯メディアとしては全世代で減ってはいるものの、マクロ的には地デジ化や長時間視聴減が理由で、個人メディアとしてはいまだに大きな力がある。その先に録画やスマホ・タブレットとの組み合わせで、個人が動画を持ち運んで見るということが海外では起こっている。日本のTVはそういう面の対応は薄い。つまりTVでもタブレットでも各デバイスがコンテンツの奪い合いをするような状況ではなく、デバイスや配信の問題と、個人が24時間のうちでどのようにスムースにコンテンツを楽しむかという問題は別になりつつあるように思える。だからTV放送の同時性や大型画面を皆で見るというモデルを捨てて再考すれば、スマートデバイスと共存するTVという新しいモデルも見えるのであろう。それが今言われているスマートTVで実現するのか、ネット主導で勝手に進むのかは、まだわからない。