投稿日: Jun 06, 2015 12:56:20 AM
カメレオンの体の色が周囲に合わせて変化する原理がどのようなものであるのか、近年までわからなかったという。これも液晶のようなミクロな構造が皮膚の下で変化することで、光の吸収反射が変わるもので、構造色であって、色素とか色フィルタを使うものではない。
構造色はCD・DVDのような細かい溝とか、油膜のような薄い膜にいろいろな色が表われるアレで、生物(虫や鳥)の美しい色はほとんどこの原理による。物理の教科書では光の回折・干渉として説明されている。
構造色を意図的に出すにはミクロな構造を作らなければならないが、これはもはや半導体プロセスの方が細かくなってしまったくらいなので、結構任意のものが作れそうになっている。薄膜フィルタなどは窓に張るものから、デジタルカメラ用のものまでいろいろ作られていて、まだ工業用で高価だが特定の色だけを任意に取り出すフィルタも作れるようになった。
しかし色を変化させるには粒状のもので大きさとか間隔をミクロン以下の単位で制御できる必要がある。
生物の場合は化学的なプロセスで変化が起こり、カメレオンやイカや甲虫では可逆な変化をするものもある。ただこれを人間が真似して作り出すところまではいっていない。モノクロ画像に関してはイカの液晶で光のスイッチをするところまでは来ているわけだから、カラーに使えるようになるのはあと一歩ということかもしれない。こういう方法が何が良いのかというと、反射型のカラーデバイスが可能になるからで、バックライトが不要とか炎天下でも見やすいということが起こる。
前世紀に於いては表示装置のバックライトは怜陰極管を使い高い電圧をかけて蛍光灯のようなものを光らせていたので、小さくしにくいし電気を多く喰った。その時代に於いては光源が不要で電気を喰わない電子ペーパーには非常に期待がかかった。それで今日のKindleペーパーホワイトのような商品も生まれたわけだが、他の応用の予定は殆ど消えてしまって、液晶に白色LEDバックライトをつけたものに置き換えられてしまった。
それだけ白色LEDの発明は値打のあるものではあったが、電子ペーパーはカラー化するには時間が足りなかったという点でも不幸であった。もし将来にカメレオン方式で新しい反射型カラーディスプレイが実現したとして、それを人々が電子ペーパーと呼ぶかどうかはわからないが、この領域にチャレンジするテーマがあるなということは再認識しておいた方がよいだろう。
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