投稿日: Mar 30, 2016 1:45:55 AM
文書を作成する際に写真や図版などグラフィックスを使うと有益な場合が多い。文書作成技術の歴史を振り返ると、グラフィックスが自由に使える方向に進んできた。産業革命の頃はまだ図版は版に刻らなければならなかったのが、写真印刷が可能になり、それもカラーになり、デジタル文書になると動画も貼りこめるようになった。
マルチメディア文書については研究も標準化の取り組みも、もう30年はやってきたと思うが、実社会で誰でも使えそうなものはWordどまりで、SNSやWebのCMSでかろうじてマルチメディアが扱えるものがあるくらいである。
マルチメディア文書の発想は、そもそも紙の文書を画面にするようなものであった。紙でも画面でも一定サイズの矩形の中でコンテンツ表現をする考えともいえる。編集レイアウトという技法が重要であった。しかしグラフィックスは本来一定の矩形には収まらないものなのだ。それは人の視野の一部であって、たまたまフォーカスしている部分だけ取ると矩形に切り取れるようになったとしても、頭の向きを変えるだけで異なる像になるわけだし、異なる像の集合として立体物とか現実感というものが認知される。
3DCGが扱いやすくなるにつれて、ゲームやCG映画だけでなく、動画と組み合わせたメディアが多く考えられるようになってきた。かつてマルチメディア文書でインタラクションを仕組んでもあまり活用されなかったのだが、動画をベースにしてマルチメディアのインタラクションを加えていく方が自然に思えてきた。現在VRとかARとかMRとかいろいろな呼び名があるが、基本は3DCGであって、ARやMRはそれにカメラ映像を加えたものになる。
こういった仕組みを使う方が文書モデルよりも視覚による認知には向いている。操作マニュアルなどはページをめくる必要もなく、目で見ている対象に関する情報を表示することができるだろう。
現在のところVRはエンタメ用とか危険作業の訓練用に、ARは販促とか医療関係などの着地点をもっている。これらは不思議なことに、誰でもわかるものすごく安直な用途と高度に専門化した用途に極端に分かれてしまっていて、中間がまだない。高度な用途にははっきりしたニーズと、どうでなければならないという仕様があって、高額でも意味があるのが明白なのだろう。安直用途はコストをかけないためにスマホのアプリ化すれば普及は早い。
おそらくその間に、仕様が決めかねるとか、コストパフォーマンスが難しいなどの用途が、ビジネスでも教育でも潜在的に多くあるのではないかと思う。
記事『動かせる写真』では、将来は静止画も自分の視点で見れるように操作するのが当たり前になるのかもしれないことを書いたが、それはヘッドマウントディスプレイを使えば今でもできる。このVRやARはもはや旧来の文書お踏襲するところは殆ど無いだろうが、そういうところにマルチメディアは生息の場を得ていくのではないか。
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