投稿日: Aug 13, 2010 11:25:36 PM
誰が味方で誰が敵か、再考している方へ
先般、元サムスン電子常務吉川良三氏のモノ作りの話が話題になったが、そこで『「もの」と「つくり」を分けないといけない』『大学では「もの」を考え、そうでない人は「つくり」を担う…』という指摘があった。それとは直接関係ないが思い出したのは、AppleとMicrosoftの関係だ。Microsoftはハードウェアを作っていないのでAppleと対照するのは難しいし、ビルゲイツはApple製品の愛好者であるとか、OfficeのApple版などMicrosoftは最も多くApple向けエンジニアを抱えている会社でもあったように、決して敵対関係ではなかった。かつてDTP黎明期にAppleとAdobeが対立した際もAppleとMicrosoftは提携したし、Unicodeにおいても両者はよい関係であった。
そこで何が対照的かを考えてみたのだが、将来どうなるかについて考えていることは似ていても、戦略が異なること、特に誰に向けて売るのかが違っていて、それはそれぞれの会社の持ち味でもあり、そこもうまく連携しているといえる。つまりAppleはソフトとハードをともに設計するのでアーリーアダプタ向けに先走りで製品を作り、Microsoftはハードを作らないこともあり、アーリーアダプタ分野には出にくいという関係にあった。MicrosoftはAppleと戦うのではなく、既に使われているコンピュータの先輩と戦っていたのである。つまり新しい応用分野を創り出すのではなく、ダウンサイジングといわれたように、 今までのシステムやソフトよりも安あがりで生産性が上がることを武器に市場を奪取していった。
これを永年行ってこれたのは、Appleには新しいものを創り出す力があり、一方Microsoftには古いものを壊す力があったからだ。つまり単に今までにない新しいものを作れば市場に受け入れられるわけではない。利用者にとっては新たなことを覚えたり余計な投資はしたくないというコンサバな面があって、そこに対して前に進まざるを得ないという意識変化がないと、今までと異なるものは受け入れられない。MicrosoftはPC販売にOffice製品をバンドルさせるとか、IEをバンドルさせるなど、利用層のボトムアップをしたからこそ、ホスト・ミニコン・ワークステーション・サーバにそれぞれ専門業者が居たにもかかわらず、エンタプライズ向け製品にも食い込んでいくことができた。
フリーやオープンソフトのMSオフィス互換製品が何度も登場しながらも、それだけでは市場を獲得できなかったのは、それらがワークステーション・サーバなどバックヤードの業者の釣りであって彼らの延命策であることが見え隠れしていて、エンタープライズコンピューティング全体のダウンサイジングにならないと判断されたからだろう。つまりMicrosoftの製品の善し悪しとは別に、Microsoftが古いコンピューティングをぶち壊すことなしには、本当のブラウザベースとかシンクライアントは来なかったと思う。しかし今クライアント側をボトムアップする要素は殆どなくなり、クライアントソフトの役割も減っていく中で、Microsoft自身が壊される対象となりつつある。
以前Microsoftがやったように、アプリをどんどん提供してクライアンとを味方にして、OSを乗っ取る力をもった会社も出てきた。これが一直線に伸びるのか、またライバルが出るのか、まだ判断はできない。