投稿日: Nov 14, 2011 12:48:43 AM
母屋を変革することは難しいと思う方へ
早稲田大学ソーシャルアントレプレナー研究会・新聞販売店イノベーション研究部会第2回が11月12日に行われて、朝日オリコミの鍋島裕俊氏がオリコミ広告概論と電子チラシなどの動向をプレゼンし、また株式会社セル坂入徳治氏が「新聞販売店店頭における野菜の産直販売活動」について話した。第1回については記事『新聞をとりまくソーシャルビジネス』にてコメントしたように、新聞の減少傾向の中で販売店は系列依存ではなく自立した経営を考えなくてはならなくなって、各店のテリトリーである地域と共存する活動を始めている。それは朝日の系列店も読売の系列店も一緒になって情報交換や模索をしようというものなので、新聞社の考えが及ばないようなことも起こり始めている。
何年か前にウチが仲人した若夫婦が今年2人目の子供ができた。この30台世代になると新聞はとらず、固定電話はなく、TVはパソコンと共通というような暮らしである。この人たちは中野区にいるのだが、鍋島氏の話によると中野区の世帯は半数しか新聞をとっておらず、西武鷺宮駅ではオリコミ業者が駅内にラックを借りて、新聞オリコミを毎日ピックアップできるような試みを始めているという。しかしこれでは朝にスーパーのチラシを見るわけには行かないので、今年サービスを取りやめたリクルートのTownMarketのように、内容の傾向が新聞オリコミとは異なってしまうだろう。オリコミの中でも毎日の生活情報を扱うものは新聞との親和性も高いし、また地域と強く結びついたもので、これからソーシャルアントレプレナーにつながるテーマだろう。
「新聞販売店店頭における野菜の産直販売活動」は唐突なようにも思えるが、生活者との接点を持ちたい、それを大きくしたいという販売店の想いで1昨年くらいから増えてきた。なんらか定期的に行われているのは都内で46箇所にのぼるという。坂入氏は池袋の読売の販売店頭で、茨城の野菜を中心に毎週水曜日に販売している。農家が早朝に採った野菜をトラックで都内に運んで10~11時から13時くらいまでかかって売り切る。販売店は読者サービスとして、高齢者などいわゆる買物弱者向けに、嵩張って重い野菜を宅配するようなサービスもしている。最大のメリットは、産直ということで有機農法とか低農薬とか生産者の想いと生活者の想いをつなげ、安全で新鮮な野菜が食べられることだが、3月の原発事故以来茨城産品も子育て世代に警戒されて売り上げは落ちたという。
こういった販売店頭での直売の案内は事前にチラシで知らされる。最初は野菜のセット販売の予約を取るような考えだったそうだが、現物を見て買ってもらう方がインパクトが強いようだ。地域のイベントや商店街のイベントとしても同様の産直を販売店が取り次いでいるところもあるという。今は販売店と農家が何かの縁で直接つながって行っているので、あまり利益指向ではないが、ソーシャルな仕組化によって運用コストの低減をすることが今後の課題だろう。みんなそれぞれ頑張っていても生産の多少と販売の機会のマッチングをうまくとるのは難しいだろうが、それをITやコミュニケーションで補助して円滑に運用できるプラットホームが必要になる。
今回の話の面白いところは、新聞販売店は新聞社の枠を外れたことをしていて、農家も農協の管轄外で活動している点だ。最初に販売店が交渉に行ったのは農協だったが、農協では対応できないので個別にやるようにいわれたそうだ。つまり既存のビジネスの仕組みは新しいことに入っていけないで、販売店も農家も自立することで結びつくという点である。これは日本の他の産業分野もほぼ同じなのではないだろうか。
関連セミナー http://www.mediverse.jp/
2011年11月24日(木)18-21 成功するネット通販のプロモーション
“費用対効果最大化”を狙った儲かるための通販・ネット広告 ~低コストで売上・利益を上げリピーターを獲得する広告戦略とは?~