投稿日: Sep 04, 2015 12:56:39 AM
音楽、小説、漫画、などのコンテンツの世界は、アーカイブとか古典とか過去の遺産の部分と、新作に大別される。いずれも一部の定番とかヒット作と、多数のロングテールの部分がある。新作は出版社とかレコード会社などそれぞれの分野の目利きによって選択され、売れそうなものがプロモーションされる。しかしこういったプロの選択から漏れてしまって日の目を見ないで終わってしまう作品は数多くある。
だいたい出版社は新人発掘のための何らかの登竜門的な媒体を用意していて、そこに投稿がされるようにしていたが、昨今はそういう余力はなくなったのか、クリエーターも新作の発表の場というのはネット上で模索するように変わりつつある。しかしまだネット初の国民的ヒットというのはあまり聞かない。きっとハリーポッターのように既存の産業の外側からもヒットコンテンツが生まれることはあるのだろうが、偶発的な現象として単発で終わってしまう可能性が高い。
そこでネットでも登竜門的な仕組みがWeb上で作られ始めていて、漫画の場合は投稿サイトでも相当数の利用者を集めるようになっている。テレビでも宣伝していたマンガボックスは読むためのアプリのダウンロードが800万になったといい、縦スクロールのcomicoはその上を行くらしい。小学館のジャンプ+も何百万になっているだろう。
その他100万ダウンロードクラスの漫画投稿サイトはかなりの数に登っている。また漫画の投稿とともに漫画の原作も意識した小説の投稿サイトのエブリスタもダウンロードが1000万を越し毎日100万人が見るという。以上はだいたいが無料のものであるので、マニア向けからスタートしたともいえるのだが、大出版社も参画するようになったほど無視できない存在になった。しかし実際には大出版社にとって新人発掘になっているかどうかは疑わしい。
つまり投稿サイトを作っただけでは足りないものがあるわけで、やはり目利きとかキュレータの出番がネット上にもなければならないのだろう。とはいっても、そういう人たちが新人を牛耳るというのではなく、コンテンツの見方、味わい方、というのを披露して、読者が自律的・多角的に評価できるようにしていけば、紙の時代とは一味異なる、より層の厚いコンテンツの世界が生まれるように思える。
また評価の多角化は過去作品を見直すきっかけにもなるはずだ。ネットのコンテンツ流通は従来の出版とは位相を変えることで発展するのではないか。