投稿日: May 09, 2010 6:46:3 AM
自分の業界にも中ヌキが迫っている方へ
ネットによる新たなつながりによってパフォーマンスを上げようというのが今日のビジネスの大命題である。つなぎ換えをするためには、今までの結合を切り離す必要がある。ハードとソフトの分離とか、OSとアプリの独立性とか、標準フォーマットという課題が語られ、また再構築にはプラットフォーム論とかマッシュアップの手法などが語られる。再構築のプラン作りではショートカットできるとことか重複などに着目する。その結果は、何らかの中ヌキシステムを作って、かかる費用をペイさせようということになる。海外旅行で欧米に行くと、日本は多くの人手を使って仕事をしていることがわかる。だからITでコストカットといっても、実はIT以前に中ヌキできるところは多くあったのである。
さらにその先の中ヌキがいくつも待ち構えている。特にIT業界は。出版界が電子書籍で中抜き云々以上のことが起こるだろう。コンピュータシステムは何年か使うとシステムの更新をしなければならなかった。ソフトの進化という面もあるが、ハードウェアの陳腐化とか信頼性低下が避けられなかったからである。そんな更新のタイミングで、最近はこんなソリューションがお勧めです、みたいな話をしてソフト面も「進化」させてきた。実際にはソフト面での効果が大して出なくても、どうせシステムの入れ替えは必要だったからということで、「まっ次回ちゃんとやろうぜ」、で終わっていたように思える。
しかしクラウドやSaaS時代になって、自分で大きなシステムを抱えなくてもよくなると、システム更新の要素は小さくなっていき、「ついで」のソリューションなどは採用されずに、ベンダーもユーザーも本当に効果のあることをしなければならなくなる。ユーザは自分に必要なソリューションが見つかったら乗り換えることは楽になる。また効果のないサービスを使っていることも社内に丸見えになる。日本人にはつらい時代になるかもしれないが、ドライに行かなければならない時代であると腹をくくるしかない。
出版社にとってもコンテンツと流通のセットの時代は電子書籍で崩れるので、会社の機能を考え直さなければならない。よく素人から百万円単位で金を出させる自費出版業者が営業できたのは、本屋に並ぶという幻想があったからだが、電子書籍で誰でも流通に乗せられるようになると、だましの営業ができなくなるのと同時に本を作る側の妄想もダウンするだろう。しかし出版社としては自費出版のロングテールの中から金の卵を見つけ出すという仕事はある。また電子書籍を紙の本にする作業や印刷発注、流通・在庫管理という今やっている仕事を、エージェンシーあるいはメディアビジネスのコンシェルジェとしてやっていくなら時代に合ったものになるだろう。大きな金が動きそうなところはまだあるので、コンテンツ側の中ヌキに抵抗するよりも前向きなビジョンを作るべきだと思う。