投稿日: Aug 14, 2012 1:58:27 AM
無料の代償は大きいと思う方へ
買い物の際にポイントカードを使用していると、誰が何時何処で何を幾らで買ったのかのトランザクションデータが蓄積されて、それが販促に用いられることは自明である。昔からクレジットカードでも同様なので、そのことが今更問題視されるべきことではない。またアメリカでは無料雑誌を受け取るのに個人のプロフィールを提供するということが行われ、大量のDMが行き交う社会となった。こういったことが今ネットに影を落としつつあるので、ネットのケースも含めてどのように問題をとりあげるべきかが問われ始めている。
紙のDMに使う宛名の場合は、昔は顧客名簿そのものが他業者の手にわたったが、今は自社顧客名簿を使って他社の商品のDMを送るとか同梱するようになって、名簿そのものは動かない(原則)。しかし利用者からすると結局は知らないところからDMが来ることには変わりがない。しかし郵送費の比重が非常に大きいDMに対してeメールはタダであるためにSPAMが発生するし、差出人が不明の怪しいメールが増えてしまった。これらが引き起こすいろいろな問題を考えると、安全で管理可能な有料のメールサービスが出てこないと解決しないだろう。つまりタダでは受発信の制限や怪しいものをチェックする管理費が出てこないからだ。
もう一点はDM名簿に比べてネットで集めた顧客情報は属性が多くあるので販促情報としての価値が高くなるが、プライバシーに抵触することが多くなる。いわゆる個人情報とプライバシーの問題は本来は切り分けがされているものなのだが、「プライバシーマーク」のようにごっちゃにしたネーミングがあるので、どうしても議論がしずらくなる。登録された情報やトランザクションの情報を他の会社に流出させないようになったとしても、そういった情報を元にビッグデータの処理をすることで浮かび上がってくる分析結果というのはどういう扱いになるのだろうか? 例えば女性がある商品を買ったことで妊娠したことがわかるが、その後の買い物を追跡すれば出産していないだろうことも分かってしまう。
特にこれからビッグデータ処理が問題視されるかもしれないが、かなり見当違いの議論も多くなりつつある。データの蓄積や処理が問題なのではなく、販促が問題なのである。データ上で肝臓に負担がかかっている人を浮かび上がらせることができたとすると、その人たちに「しじみ」食品を売りたいということがあるかもしれない。しかし広告というのは、しじみの食品としての効能と、サプリメントとしての効果と、薬としての効用のようなものを、わざわざごっちゃにして、食品を薬のように思わせて買ってもらおうということをする。そのようなDMがいろいろ来ることによって人々は、自分の属性にひもづけられて怪しいことが画策されていると疑うのだろう。しかしそれはデータ処理の問題ではなく、怪しい広告が問題なのである。
広告から表現の行き過ぎを取り除くことはできないだろうことは、広告の歴史をみると規則だらけになることからわかる。つまり広告については不文律のモラルが成立しないだろうから、ネットでも広告のルールブックは肥大していくだろう。しかしそれらがうっとおしいと思う人が増えれば広告がコントロールされる有料メディアの出番になるだろう。