投稿日: Aug 24, 2012 12:38:27 AM
きっとよい関係構築ができる思う方へ
日本語ワープロでもパソコンでもケータイでも伸び盛りの時代には、日本のメーカーは春夏秋冬に新モデルを発表していた。そのうちに市場が飽和しだすと、機能をテンコ盛にして「差別化路線」と称していた。一方Appleは大変商品の種類が少ないし、新製品発表の際にはトップ自ら出てきてどんな点が今までと違うかを力説した。この種のイベントは聴衆からどのようなリアクションが起るのかを計算づくしで準備されていた。当然ながらオマケをテンコ盛で売ろうというようなことはなかった。こういった対比を見ると、日本の電気メーカーはアフォだと思う人は少なくない。しかしよく身の回りを見ると、これは電気メーカーだけでなく、今日本でヒーヒー言っている多くの業界に通じるものである。
日本の出版界は十数年前にピークがあり、今はそこから下がって30年前ほどの売上げの水準になったが、実は当時よりも出版点数が二倍ほどあることを何度も書いてきた。つまり売上げを維持するために、1点出版して得られる利益が大幅に下がった状態に甘んじている。これが可能なのはDTPなど制作プロセスの合理化で何とか原価上昇を食い止めているからで、もし紙代が倍に値上がりしたならば今の経営は成り立たなくなるだろう。将来紙代が下がる傾向には無いので、今のやり方は今後は自らを苦しめるだけであろう。
つまり日本の出版は毎年の決算に合わせて多点数を発行して売上げを確保するとか、雑誌にオマケをつけて売ろうとかいう考えは電気メーカーも同じなわけで、それで将来に何らかの道が拓けるどころか、不利な条件が積み重なっていくだけである。こんな状態なので日本の書籍の出版点数が毎日200-300点・年で数万点あるわけだが、これが毎年続いていると、10年で数十万点の新刊になり、当然それを収納できる書店は資金的にもスペース的にもないので、新刊の3分の2は1年で書店の棚から消えていく。この新刊の急速で累積的な増加というのは世界的に見ても異常な事態であり、その中に出版ビジネスの疲弊の原因があるはずなのだが。むしろ小さい出版社の方が入魂の出版をしているが、なかなか評価にはつながらない。この両者を同時に解決することを考えなければならない。
出版デジタル機構が目標に掲げた電子書籍100万点はこういった埋もれてしまう出版物の生き残りとして考えられたのであろうが、今の異常な新刊の乱発を前提とした「ソリューション」というのは有り得ないであろう。日本で毎日200-300点発行されるほど情報発信があることは(内容とは別に)日本の活力でもあろうが、これらの多くは今の商業出版とは一線を画す自主出版になって、一旦自主出版の中で評価されたものが商業出版で再登場するという2重の出版構造になった方が皆が幸せになると思う。実際にはタニタのレシピのように商業出版以前にコンテンツが存在するものは多いからである。
実際にサブカルの世界はコミケに代表されるようにそんな世界が出来ているし、電子書籍が容易にできるようになると、原稿を書くとはイコール書籍のフォーマットにして人に見せるようになるだろう。課題はこういったものが今のコミケのように散在していると収集がつかないことで、それらの中から良いコンテンツを発掘して評価するプラットフォームであろう。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催