投稿日: Dec 09, 2010 10:27:10 PM
自己変革は難しいと思う方へ
一般にネットのビジネスはBtoC とBtoBに分けて考えられ、「コンテンツ」云々は制作関係者のBtoB、「メディア」は多数のエンドユーザ相手のBtoCにしていることが多いと思う。BtoC とBtoBでは対象となるところが異なるので、ひとつのメディア企業が両方をすることはなかなかできなかった。印刷会社はBtoBなので不特定多数を相手にするのは苦手、というような具合に。また逆に出版社は個別の法人相手というビジネスはしにくい。これは今日のネット上でもずっとひきずっていることである。
Webの初期にはWeb制作のための画像素材をCD-ROMで提供することがあったが、その頃にストックフォト・フォトエージェンシーとネット時代のサービスのあり方について話し合ったことがあった。しかし実際は権利者との関係をネットビジネスのために仕切りなおすのは絶望的という感じで、ネットでの新ビジネスには消極的であった。今はネットでコンテンツ素材を流通させることは当然だと思われるかもしれないが、いろいろな障壁を感じてビジネス化できなかった人は沢山いる。新たなビジネスにつながりそうな資源を持っていたとしても、ビジネスを前に進めるための障害は、自分自身の意識であるということだ。
記事『読者から見た出版とは』では、出版社と読者の間の「本」に関するズレについて書いたが、出版社にとっては個人読者以外に法人需要もある。しかしこれはキャラクタビジネス以外はそれほど積極的にしているようにも思えない。TV番組雑誌では生命保険のセールス用バージョンがあったり、R25でも企業向のものがあったりしたが、OEMとかサイトライセンスを積極的にするようにはなっていない点が、電子書籍のビジネスもやりにくくしているのかもしれない。おそらくeラーニング、電子教科書、電子黒板が一般化する時代には、紙の冊子では本の形に集積していたコンテンツをバラ売りすることになるだろうが、それをバラで提供・課金するか、ライセンス化とか別の売り上げのたて方を作るか、などの検討が必要になる。実は既に新たなBtoBのコンテンツビジネスは大きく動き出しているのだが、あたかも出版社だけが気づいていない、あるいは興味を示していない、と思える。これからは塾や予備校の方が先に進んでしまう可能もある。
要するにコンテンツを作ることがビジネスなのではなくて、それが最大限に活かされるような仕組みをつくるのがビジネスなのである。前述のストックフォト・フォトエージェンシーの例でいうと、多くの代理店は過去の契約概念に縛られて新しい時代には移れずに、逆にネット時代・とりわけデジカメ時代の撮影や画像利用の側からビジネスモデルを考えたところが現在活躍しているし、カメラマンを対象にしたPhotobookのような別の展開も起こった。まだネット環境は変化していくので、本質的な変化とはどのようなものか、変化の先に需給がどのように移り変わるのか、などを考えたり意見交換することが、次世代ビジネスの肥やしになるのだろう。