投稿日: Aug 08, 2014 12:49:35 AM
最近、記事広告とネイティブ広告ではどう違うの?というような議論が多い。紙媒体の記事広告でやっていたようなことをネット上ではネイティブ広告としているのではないかと思える。前職の終わりのころに雑誌の発行人であったので、広告取りに必死であったのだが、定期広告枠はさばけず、手間はかかるが記事広告の比重を高めていった。これは媒体側が企画から取材・執筆の全部を行うもので、記事本体との親和性をとっていけば、決して読者を騙すとか「売る」ようなものではなかった。そのコツを振り返ると、ネットでも同様に広告主の考えと読者のニーズの接点となるコンテンツを企画することは可能である。
しかし両者にとってプラスになるものを作るにはコツが必要で、広告枠を売るのとは営業姿勢が全く異なってしまう。雑誌でもネットメディアでも作っている側は読者の想定はしているので、さらに広告主をよく知ることによって、両者の接点というのが浮かんでくるわけだが、それは広告主を選別することにつながる。特にそれはマス広告では大きな矛盾を含む。私がやっていたのはBtoBだったので、広告主は顧客と直接のやり取りをするので、広告に嘘やごまかしは書けないが、一般生活者向きの広告は、広告の規制に引っ掛からない程度にごまかし表現をしているものが多いからである。
茶の飲料で、「国産茶葉100%」というのは、実は茶の材料の99%は茶の茎を使っていて、それは中国製なのだが、1%は葉っぱも使っていて、それが国産である、というような詭弁があったりする。成分表示では含まれるパーセントの多いものから順に書かねばならないが、最初に来てほしくない成分は、何分割かに分けて表示すれば、他のもっともらしい成分の順位が繰り上がる、というようなこともされている。つまり成分がたくさん書いていあるものは、そういうトリックがある場合がある。
これらは広告主のビジネスの本音と建前の問題であって、本音と建前が分離しているビジネスでは、ビジネスの実態は世間に知らせることはできないものとなっているから、記事広告は作り難いわけだし、それがネットでネイティブ広告がこれから重要だと言われても状況は同じである。
もっとも眉ツバ商品というのはだいたい生活者も感づいているので、健康食品のように本気で効用を信じ込んでしまう人は滅多におらず、「いいかもしれない」位の感覚で買っているのだろうから、それを後押しするようなネイティブ広告を作ったとしても、深入りして読んでもらえるとは思えない。それ以前に最初のコンセプトがインチキギリギリな商品は深入りして読んでもらうようなコンテンツ性がないであろう。
むしろ商品開発段階でコンセプトとしていたことが生活者に伝わるようにしたい場合にネイティブ広告は意味をもつのではないか。それがトレンドか何かのように言って健康食品会社にネイティブ広告をさせるようになったら、ネイティブ広告の終焉であろう。
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