投稿日: Apr 21, 2011 1:28:31 AM
デジタル化にトラウマのある方へ
出版のような商用コンテンツであろうと、企業活動に伴って蓄積されるデータであろうと、それらの活用こそが新市場開拓や新規事業進出よりも現実的なビジネスであることを見直すべきだ。結果的には自社のコアコンピタンスが新市場や新規事業につながることがあるだろうが、まずは自社にどんな情報資産があるか、どのように活かせるのかというのが出発点になる。そのためには情報資産の棚卸しを可能にするコンテンツ処理能力が必要なのである。
強みを出すためのコンテンツ管理
出版社でも一般企業でも何らかの独自性や強みを持っていないと存在意義が見出せない。出版なら人脈とか人的な編集能力とか、営業でも人的なCRM能力が、商品開発なら素材情報や過去データに通じていることが基本であろう。つまりコンテンツやデータを熟知していて、それらから何かを感じる人が社内にいるから、そのデータに資産としての価値がうまれるのであって、そのデータを他人に見せてもどんな価値があるのかわかってもらえないであろう。
しかし社内のデータに熟知している人の能力には限りがあるので、その知見やノウハウを社内で共有するように何らかのデータベースとかイントラのシステムが使われるべきである。グループウェアで営業マンの日報から何かを引き出そうとするものがあるが、それと似たような感じで過去の情報商品に関して、それを世に出したときの素材・プロセス・販売などの情報が社内で反芻して使えるものが欲しい。
人的な編集作業ではデータを抜き出したり組み合わせたり、情報を足して企画や制作をするわけだが、それをデジタルデータで行えるようにすると、パフォーマンスが上昇する。そのためにはデータを誰でも自分の机のパソコンから使えるようなコンテンツ管理が必要になる。そして例えば価値があると思える写真一枚一枚に出自や意味をメタデータで書き加えるような地道な作業から始めなければならない。
システムは軽く、軽く
従来のコンテンツのデジタル化はデータベースシステムの構築とかハードも含めて最初にある規模の投資ありきで始まっていたので、今でもそのトラウマがあって尻込みする人もいる。しかし個人が自宅でデジタル録画とかDVDからテラバイト級のデータを管理している時代のなので、過去のアナログコンテンツがどれだけあろうとも自分で情報資産をデジタル化してコントロールするのにハード・ソフトの面の障壁はなくなったに等しい。
むしろ作業が発生するたびに外注に発注する際の準備や契約作りや校正の手間暇の方が煩わしくなってきているはずだ。また外注すると戻りまでの時間ギャップがあってピンポンのようなやり方で仕事を進めると、ターンアラウンドが長くなる。社内処理なら随時できる。内部処理が進むと制作とか情報発信にダイレクトにつながることのメリットは大きい。デジタルコンテンツを内製化内部処理をする手間やコストと外注を天秤にかけることは、もう一度やってみるべきだ。
そこで内部ですべきこととアウトソーシングすべきことを仕切りなおして、両者がシームレスにつながるようなコラボレーション的なプロセスを考えるのがクラウド時代のやり方である。つまりデータに関しては所有権は自社にあっても作業上はアウトソーシング先にもそのままやってもらえるようになりつつある。これはASPとかSaaSとかいろいろな方法があるが、ハード・ソフトに縛られるのではなく、利用しただけの料金を払うモデルに変わりつつあるので、システムは最低限の軽さで可能になる。
問題はものごとを進める順序であって、デジタル慣れや活用度によってコラボレーションのプロセスを組み替えて、コストパフォーマンスを上げるような長い目で見たマネジメントが必要になる。これがないと、ウマい話に乗せられたもの、技量がついていけなくて挫折する可能性はある。だから急に大きなシステムに取り組むのではなく、軽く出来るところから始めるべきなのだ。
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