投稿日: Sep 19, 2012 12:53:23 AM
電子教科書はeJapanの二の舞かと思う方へ
電子教科書をすぐに使おうという国と、なかなか動けない国があって、その先行指標として電子政府がある。日本は結局eJapanが後退してしまった。ネットで申請をするために、まず郵便でフロッピーを送って登録するような、かえって手間のかかることをしてしまったからだ。ITの便利さというところから新システムの構築を考えるのではなく、従来からのお役所の手続きに新システムを合わせるような考えをしているからそうなる。電子教科書においても、既存の紙の教科書や教室のしつらえを見習ったやり方は、誰にとっても便利なシステムにならないのではないかと思う。
電子教科書をを使うのに電子黒板の開発や導入のような装置の入れ替えが必須な時代ではない。タブレットや読書端末はちょっと前のデジカメ並みで、個人で誰でも持てる範囲になったので、一部の学校では実験的に使い出している。ネット環境が教育現場に不備であるという話もあるが、マンションのブロードバンド化やWiFiルータがこれだけ進んでいることを考えると通信環境のコストが障害だとは考えにくい。むしろIT環境の運営ノウハウが学校にないことが問題で、授業中にトラブったら困るのでそれをどう乗り切るかだろう。つまり電子黒板などデバイスメーカーにテレビ並みの可用性を求めていて、それらを保障するビジネスモデルが出来ていないのではないかと推測する。
電子教科書のコンテンツは、デジタルへの移行措置として紙教科書との併用時代においてはかえってコスト高になってしまう。紙の印刷物を減らして浮いた費用でデジタル教材作りに当てたいと考えるのだろうが、再度教材を作るコストとか権利処理とか印税支払いなどをしていると、デジタル併用は余計に費用も手間もかかることになろう。こういった壁は最初からわかっていることなので、従来の教材や授業ではないところから新しい電子教材の応用を考えるべきである。よくいわれるのは理科の実験など紙では表現し切れない部分に使う案であるが、それらも教材コストをかけずに、授業そのもののログや撮影から手作り教材ができるような体制が必要だろう。
以前に義務教育教材のWikiを大々的にやればよいことを書いたが、すでに自分の教材をネットで公開している先生は多数居るので、そういったボランティアのコラボレーションを結集すれば教材の無料化は進めやすい。これには関わる先生が素材の引用がしやすいように、パブリックドメインを増やすこととか、フェアユースを認めるような背後での支援を行政がすることが望ましい。つまり義務教育教材の負担を軽くすることは税金の節約にもなるわけだから、ITで利用可能にできる知を総動員する考えに基づいてコンテンツのデジタル化をするべきだろう。記事『デジタル時代の図書館』にも書いたクラウド型の貸本もそこに含まれる。
おそらく従来の官公庁の文部行政からするとeJapanと同じように離陸しない可能性もあるが、民間の教育産業とか職業教育に近い高等教育(とか各種学校・専門学校)など、すでにコンテンツのデジタル化を相当進めているところが、自分のビジネスに組み込む形で先行するのだろう。そういったところが私立の学校などの電子教材提供を低コストでビジネス化できるのではないかと思う。大学の場合は先生のWebやeBookを整備していくこととを私大では進めていくことになろう。